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恋姫†袁紹♂伝
閑話―恋―
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だ」

「?」

「総大将たる我は前線に出ることは無い。それは即ち実戦の機会が無いという事だ、ここまでは良いな?」

 恋が頷く。

「そんな我が剣を抜く場面があるとしたら……暗殺者、刺客の類との突発的な場だろう。
 恋も知っている通り、我が陣営の防備は尋常ではない」

 屋敷、遠征先、そして街の中までも警備が行き届いている。
 袁紹が気軽に屋敷から脱走できるのも、常に追従する手練れが居るからだ。

「その警備を掻い潜り我の元に届く刺客、恐ろしいほどの手練れだ、道場剣術の我が武では心もとない。故に先程の戦法だ。地形、装備、状況、あらゆる物を駆使して“生き残る”」

 袁紹は自分の存在があるからこそ、今の陣営が成り立っていると自負している。
 決して自惚れでは無い。事実、癖の強い人材は彼を中心に集っている。
 もしも袁紹の身に何かあれば――……今の勢力は維持できないだろう。隠居した袁逢を中心に一時的に纏まるかもしれないが、袁紹の理想を実現させようとする者達と、支柱亡き今、富国強兵に勤めるべきとした保守派に割れるはずだ。

 もしそうなれば、幾らでも袁家を弱体化させる策が思いつく。
 覇を唱える華琳、彼女は容赦しないだろう。

「我は自分の理想に向かって多くの者を巻き込み、数多を救い、又は犠牲にして来た。
 彼らに報いるためにも我が理想、満たされる世は実現せねばならぬ。
 その為に何としても生き残る、これこそが我が覚悟だ!」

「!」

「――と言えば聞こえは良いのだがな。なに、ただこの戦い方が骨身に沁みているだけだ」

 “覚悟”を口にした後で、自嘲気味に呟く袁紹。
 目を皿にしている恋に苦笑しながら、そこに至った経緯を話した。

 思い出されるのは私塾から戻った頃、当主就任後の地獄の日々だ。
 父、袁逢の働きにより反袁紹派を荊州へと追いやったが、その中には本性を隠し南皮に残る者達も少なからず居た。
 彼らの目的は若い当主を傀儡にすること。娯楽の味を覚えさせ、自分達の権力拡大と不正に目を瞑らせるのが狙いだ。無論失敗に終わった。
 私塾の生活を経て一回り大きくなった袁紹は、甘美な誘惑には耳を貸さず様々な改革を促進した。その中の一つが不正を罰し、禁止する事。

 叩けば埃が幾らでも出てくる彼等は焦った。それと同時に袁紹を傀儡に出来無い事を理解し――
 彼の暗殺を決意した。

 清廉潔白な当主が居なくなれば、後任はその妹である袁術が勤める。
 物心付く前の幼子なら左程苦労せずに教育を施せるだろう。幸い彼女は反袁紹派の手の内に居る。後は邪魔な現当主を退けるだけ――……。

 ある時は食事に毒を、ある時はすれ違う女中に、ある時は湯浴みの最中に襲われた。
 その熾烈な過去を袁紹は生
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