第3章 リーザス陥落
第89話 想定外の敗戦?
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トーマはそう言って笑っていた。
本当に病魔等、吹き飛ばしかねない程の笑顔、それはそれは清々しいものだった。
だが、それでも死は着実と近づいてくる。病によって、身体そのものの免疫力も低下する一方である為だ。
『……………』
『同情は、してくれるな。儂は数多の兵士達を。……友を看取ってきた。それがそろそろ儂の番が迫ってきた、ただ、それだけの事だ。それに』
トーマは、ユーリの目を見据えてはっきりと言った。
『主は、……ユーリは、目を覚ましてくれた。まだ、死ぬ訳にはいかん。……死に、逃げる訳にはいかんからな』
『ああ。……侮辱だったな。トーマなら大丈夫か』
この男であれば、人類史上初の男。――不治の病をも克服した男になるかもしれない。そして、初の女は、ミリで決定事項だ。
ユーリはそう思えた。
『リーザス城を目指すか』
『ああ、勿論だ』
『ならば、また――会うだろう』
『……そうだな』
『その時は、この借りを、全て纏めて返させてもらおう』
トーマはそう言うと、ロゼから貰った極世色癌も出して、そう言っていた。ユーリはそれを見ると、軽く笑う。
『ああ。――期待している。また、また会おう。トーマ』
『そうだな。ユーリ』
そして、一行は、トーマ達の部隊と別れ、ノースの街に足を踏み入れた。
〜ノースの街〜
入る直前までは、それなりに警戒をしていたのだが、ヘルマン軍の気配は少しもない。トーマがあれだけの少数だけで迎え撃った、と言う事が間違いない事がよく判る。
――己の命を捨てる覚悟があったのだろう。あの場に揃った全員には。
「……ユーリ殿が、一騎打ちを申し立てなければ、どれだけの犠牲者が出ていたか、想像がつきませんね」
リックはそう呟く。
それに同意する様に志津香も呟いた。
「誰ひとり、避かなかったから……。魔法が当たっても、マリアのチューリップが当たっても……」
「人間じゃない、思ったしね……。砲弾、落とされちゃった時は」
マリアも、同調した様子で、苦笑いをしていた。
本当に良かったのだと言えるが……だが、そこまで手放しでは喜べない。
「……ゆぅ」
「ん?」
志津香は、ユーリに近づき、耳打ちをした。
「私達は、仲間なんだから。……例え、理由があっても、もう……あまり、無茶しないで」
消えゆきそうな程の小さな声。
確かに、回りに聞こえ無いように、小声で話したから、といえばそうだが、何よりも、志津香は、ホッホ峽でのユーリの姿を見ている。その上に、トーマと言う規格外の人間と一騎打ちをする、と言う場面にもなれば、不安で押しつぶされそうになっても無理はない。
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