二項目『なぞなぞ ー終わらないお茶会ー』
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ーー飲んだ。
「あ、美味しい」
「おまっ……なんか変なことになってないよな!?」
『不思議の国のアリス』をモチーフにしているだけあって、ーー体が大きくなったり、縮んだりはともかくーー何かおかしな事が起こるかもと思い、手をつけずにいたが……心配は杞憂に終わりユーリはホッと息を吐いた。 と同時に急速に美味しいと評された紅茶を飲んでみたいと思い始めた。
カップを顔に近づけると上質な花の香りが鼻腔をくすぐる。 不安を押し込め、口へとカップをつけ、傾けた。 口一杯に清々しい花の香りが広がり、爽やかな果物の甘みが広がる。 紅茶特有の渋味はむしろ、それの美味しさを引き立てている。
「……美味しいな」
「ふふ、それは良かった。 さぁ、焼き菓子もある。 チョコレートもある。 遠慮せずに食べたまえ」
帽子屋に勧められるがまま、白磁の食器に盛られたクッキーに手を伸ばす。 これもまたサクッとして美味しかった。 暫しのあいだ、二人は穏やかなお茶会を楽しんだ。
??
時間にしておよそ一時間ほどだろうか。 ユーリとシィは、アリス達とお茶会を続けながらも、クエストのキーワードを聞き出そうとしていた。 しかし、踏み込んだ質問をしても、黒の少女に『ダメよ、お兄さん。自分で気づかなきゃ』と窘められてしまう。 仕方なく、知恵を巡らせてもいい案は浮かんでこず、何杯目かわからない紅茶を飲み干してため息を吐いた。 いくら美味しい紅茶やお菓子でもずっと食べ続ければ飽きがくる。 テーブルに頬杖をついていると、テーブルの向かい側では、シィが膝上に白い方のありすを乗っけて、隣に黒い方、アリスを座らせた状態で絵本を読み聞かせていた。
「ーーーシンデレラと王子様は、幸せに暮らしましたとさ、おわり」
「まぁ、素敵なお話ね!」
読み終わるとパチパチと小さな拍手が起こり、二人の童女がキャッキャッと楽しそうにはしゃいでいた。 会話の端々から察するにシィが読み聞かせていたのは、『灰かぶり姫』だろう。 今では色々と脚色されたおかげで典型的なハッピーエンドとなっているが、グリムの『シンデレラ』ではシンデレラを虐めていた継母たちが酷い仕打ちを受けたりするため、平和的な終わりとは言い辛い。
「やっぱりお話はハッピーエンドに限るわ!」
「そうね、あたし。 それに甘いお菓子とお砂糖を入れた紅茶があればみんな幸せね」
二人のアリスは、シィに取ってもらったクッキーを美味しそうに頬張りながらお喋りを始める。 双子の頭を優しく撫でるシィは楽しそうな反面、このエンドレスな展開に珍しく疲れているようにも見えた。 永遠に続くお茶会……、ポツリと漏らした彼女は何かを閃いたようで少女達にバレないようにこっそりと笑みを深
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