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俺の四畳半が最近安らげない件
クリスマス 怪老人編 〜小さいおじさんシリーズ5
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それだけならば良かったが…そのうち悪戯の度合いが増し、大量の兵糧を、勝手に兵に振る舞い始めた。見せしめに処刑したのだが」
『処刑』にかぶせるように、襖がバスン、と大きな音を立てて外れた。同時に押入れの暗がりから大勢の青い服を着た老人がなだれ込んで来た。
「きっ…」
「来たぞ――――!!!!」
豪勢が脇息を蹴って立ち上がり、端正は弾かれたように駆け出した。白頭巾は、すっと炬燵を捲って入り込んだ。なだれ込んで来た青服の爺達はおどけながらワイワイ叫び、時に踊り狂い、俺の四畳半を席巻する。…この間の呂布襲来と、どっちがましだろうか…。ニヤニヤ笑う爺の群れに豪奢な袖を散々引かれながら、豪勢が指笛を吹いた。
「許?――――!!!」


うえ、あいつまた暴れる系の武将呼びやがった!!


襖の暗がりで刃物が光る。身の丈ほどもありそうな刃物を携えた巨デブが、疾風のように現れて手近な青服の首を跳ねた!!紅い球根のような首が俺の膝近くに転がってきた。その後も続々、出会い頭に青服達の首が転がる。借家の畳は真っ赤に染まった。ど、どうしよう、これ畳を自費で変えたとしても事件を疑われて通報されるよな……。
「ひっひいぃ―――!!!」
端正が割と情けない悲鳴をあげた。な、なんだ今度は!!
「ば、ば、化け物!!!」
首を落とされた青服が、ゆらりと立ち上がり、自らの首を掴みあげた。……俺の口からもけたたましい悲鳴が漏れていた。
「うっ…しょい」
首を肩に乗せると、もぞりと傷口が蠕動して首が繋がった。そいつは何事もなかったようにまた走り出す。そしてまた許?に首を落とされる。
「うっしょい」
「うっしょい」
「うっしょい」
あちこちから奇妙な掛け声が上がり、首を断たれた筈の爺が続々起き上がった。肌がぷつぷつと粟立ってきた。…やばい、俺こういうのほんと無理、無理無理。なんだよこのクリスマス。
「許?殿やめろ、なんかこいつら増えているぞ!!」
端正がなんとか気を取り直し、許?を羽交い絞めにする。許?は無表情に端正を振りほどくと、再び青服の首を刎ね始めた。うっしょい、うっしょい、うっしょい……俺の四畳半を満たす、うっしょい。豪勢は放心したような体で、顎を上げた。
「あの時と同じだ…奴は死なない。斬っても燃やしても蘇り、増えるんじゃ……」
「じゃあなんで許?とか呼ぶのだ卿は!!……おい、あの男は何処に消えた!こんな大変な時に!!」
白頭巾なら炬燵の中だ。
「うわぁぁあもう放心している場合か、許?を止めろ!おい、貴様も出てきて手伝え!!」
「――そして奴は余が昔書いたものの後悔して葬った恥ずかしい本を取り出して見せたり、増えて街に溢れてみたり、首を抱えて大勢で余のもとに殺到したりと怪異の限りを尽くし、最後に余の死期を告げて消えた…そして、余は」


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