クリスマス 怪老人編 〜小さいおじさんシリーズ5
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びスマホに触り、クリスマス・イブが流れ始めると、意を決したように歌い始めた。
「…雨は夜更けすーぎーに、雪へと変わるーだーろう、サイレーンナーイ、ホーリーナーイ…」
クリスマスツリーを囲んで座る古代中国の偉いおっさんたちがぼそぼそ歌う『クリスマス・イブ』…何だこれは。何なんだ今年のクリスマスは。…俺は、悪い夢でも見ているのか。
「――おい、これやっぱり全然盛り上がらんぞ。…卿、何を震えている」
羽扇をかざして俯く白頭巾の両肩が震えている。ふと覗き込んだ端正の顔が、みるみる強張っていく。
「こ…こいつ!謀ったな!!おい、こいつ大爆笑だぞ!!」
「おっ…おふっ……」
もう笑い過ぎて声にならなくなっている。……本っ当、こいつは。こいつだけは。こりゃ豪勢激怒か、と思われたが、彼は鷹揚に居住まいを正して立ち上がると、腰をぷりぷり振りながら尚も高らかに歌いだした。
「まだ消えのこ〜る〜、きみへのおも〜い〜」
「あふっ…うぐっ……く、くくくく…や、やめっ……」
もう息できなくなって体をくの字にして、どうと崩れ落ちる白頭巾。豪勢はどさりと腰をおろし、脇息にもたれた。
「慣れぬ大爆笑で笑い死ね、たわけが」
―――なるほど、大物である。
「…クリスマスについて調べると散見される『サンタクロース』とかいう人物が、浮かれる者と浮かれないものの端境になっている気がするな」
端正が、鋭いことを言う。白頭巾はまだ痙攣中だ。…自業自得だが。
「どうもこの世界の人間は、幼いころから『クリスマスの夜、サンタクロースという赤い服の爺さんが、いい子にだけ枕元にプレゼントを置いていってくれる』と刷り込まれ続けるそうだ。宗教ほぼ関係なく」
「なるほど、永い刷り込みによる条件反射でキリスト信者でもないのに浮かれポンチな気分になってしまうと」
ようやく大爆笑から復活した白頭巾が口を挟む。
「卿は…。そろそろ言い方を選ぶということを覚えよ」
「あれも謎の多い存在ですなぁ。一夜のうちに、何処にでも在り、どこの家にも入り込み、物を置いて去っていく…」
「……ん?」
それまで関心なさそうに脇息にもたれるばかりだった豪勢が、がばと身を起こした。
「貴様、それは真か」
「む?どうしました、そんなに青ざめて」
白頭巾が、羽扇をそっと口元に充てる。この性悪先読み白頭巾をもってしても、予想外の反応だったらしい。端正も、そっと辺りを見回して眉を顰める。
「卿も、思ったか」
「何をです」
白頭巾の声に若干イラつきが混じり始めた。奴は『自分だけが知らない』状況を、病的に嫌う。
「子供たちに配るおもちゃは、魔法のように溢れ出したわけではあるまい」
豪勢は、確かめるように端正に話を振る。
「この世にはクリスマス商戦という言葉がある。クリスマスの時
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