2部分:第二章
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桶に花札でも入れとけ。じゃあな」
「全く」
暫くして一升瓶を抱えて戻ってきた。そしてそれを手にどっかりと家の中に座り込んだ。
「戻ったぜ」
「酒はそれだね」
「ああ、杯持ってきてくれ」
「あいよ」
シズは言われるまま杯を持って来た。そしてそれを手渡す。
「大丈夫なんだろうね、その酒」
「多分な」
「多分って」
「飲んでみねえとわかりゃしねえよ」
そう言ってその杯に酒を入れはじめた。トクトクと音がする。
「そうだろ?どんなに美味い酒でもな」
「そりゃそうだけれどね」
「まあこれで一年のはじまりだ」
彼は言った。
「おとそだ、おとそ」
「やれやれ」
「飲むぜ、今日は」
そう言って早速飲みはじめた。彼は瞬く間に一升空けてしまった。
「ふう」
「凄いね、一升あっという間じゃないか」
シズはそんな彼を見て言った。彼女は飲んでいない。何か危なそうだったからだ。
「久し振りだぜ、こんなに飲んだのは」
「そうかい」
「なあ」
「何だい?」
「ちょっと・・・・・・気分が悪いや」
「えっ!?」
それを聞いて顔を顰めさせた。
「それってまさか」
「そのまさかかもな。何かよ、頭が」
「ちょっと御前さん」
シズの顔が見る見るうちに蒼ざめていく。
「冗談じゃないよ、やっと戦争が終わったってのに」
「医者呼んでくれ」
彼は言う。
「何かよ、目まで」
「ちょっと、ちょっと」
彼女は慌てて子供達を呼ぶ。
「早く医者呼んできな。このままじゃおとっつあんが」
「早く頼むぜ」
彼は言う。
「何かよ。少しずつ」
「しっかりしなよ、何言ってるんだい」
夫の側に来て必死に声をかける。
「あんたに死なれたら困るんだよ、お願いだから死なないでくれよ」
「へへへ、やっぱり運の尽きかもな」
最後に自嘲めかして笑った。
「おとそで終わりってな」
そう言ってその場に崩れ落ちた。そこに医者がやっとやって来てまた大騒ぎとなったのであった。
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