第1章終節 離別のポストリュード 2024/04
壊れかけの黒:剣戟の残響
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「だったら、今は聞かないでおくね。でも、辛いことを一人で抱え込まないで欲しいの。話してくれるまで待ってるから」
「………済まない」
「いいよ。だって、私は燐ちゃんの味方だもん」
「そうか、………ありがとな」
傍にいてくれる。その言葉はこの上なく心強くて、同じくらい怖く思えてしまう。
あの夢のように、守ろうとした相手を自ら殺してしまうかも知れない。そう思うと、グリセルダさんと出会うまで恐れていた、ヒヨリと離れ離れになるという結末をむしろ望んでしまう時さえある。いっそ、はじまりの街を出る時にヒヨリの手を振り払ってさえいればと悔やむことさえ多くなった。
それでも、今もこうして握られる手の温度に縋る俺は、どこまで矛盾を内包しているのか。
どこまでも、弱くなっているとさえ思える自身の精神に苛立ちを感じ、悪夢による消耗を覚えつつも、部屋を出るべく何とかソファから立ち上がる。部屋の窓からは西日が差して、上層の底と室内をオレンジに染めていた。
「少しだけ、外の空気を吸ってくる」
「うん、いってらっしゃい!」
底抜けに明るい声で送られながら、リビングから玄関へと向かう。
少し長めの散歩でも、と予定を模索しつつ歩を進めていると、ドアを開けて誰かと相対するティルネルの姿があった。歓談する様子からして相手は友好的なのだろうが、こうして拠点まで訪ねてくるプレイヤーはごく限られる。あの様子からして、アルゴかクーネ達が妥当だろう。ヒヨリも部屋から顔を出したところで、来訪者の顔を拝むために玄関まで移動することにする。
――――そして、その顔触れに、思わず呆気にとられる。
一人は攻略組にあってトップクラスの実力を誇り、《黒の剣士》と呼ばれるに至った全身黒ずくめと、もう一人は前線攻略ギルド最強と謳われる《血盟騎士団》の副団長、純白に赤のラインが刻まれた防具を纏う《閃光》だった。攻略と余暇を気ままに過ごす自由気質と、余程の事情が無い限りは前線攻略に明け暮れる攻略の鬼。どうしてこの取り合わせがここに居合わせているのか。変なことも起こるものだと思う頃には、脳裏にへばりついた暗澹とした感情は気にならないほどに沈静していた。
「もう起きられて宜しいんですか?」
「ああ、十分寝たからな。それにしても珍しい客が来てるじゃないか」
ティルネルに首肯しつつ、外に立つ両名へと改めて視線を向ける。
さながら学級委員と問題児のペアは、どうやらそれなりに付き合いのある黒い方が対話を受け持つらしい。
「リン、聞きたい事がある。少しだけ良いか?」
「構わない。散歩がてら付き合ってやるよ」
「………いや、あまり口外したくない話なんだ。悪いけど、中で頼む」
隠しコンテンツに関わるものかと
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