第30話 憤怒
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サソリは、男の中指を掴んでいる手に力を込める。
すると、隣に居た湾内がサソリの腕を優しく握り始め、首を横に振る。
「!?」
「もう良いですわサソリさん」
「お前を襲った奴だぞ」
「わたくしは、サソリさんが助けに来てくれた事で満足ですわ。だから、許してあげてください」
サソリに笑顔を向ける湾内。
どこか誇らしげでもある。
湾内の安心しきった笑顔にサソリもう力が抜けてしまい、サソリは拘束した金髪の男から手を離した。
「はあはあはあ」
「今回は、湾内に感謝するんだな。もし同じような事をしたら、次は容赦しねえからな」
サソリの圧倒的な殺気に包まれた金髪の男は、身体中から冷や汗を流しながら、ガタガタ震えだした。
「だ、誰だてめえ!!?」
倉庫の入り口の扉が開けられて、先ほどの二人が入って来た。
「リーダー!すいません、新人がボカしたみたいです」
頭を下げる二人の不良の間から、ニッコリと笑顔を浮かべた男が入って来た。
「あれあれ?知らねえ男がいるねー」
迷彩柄のタンクトップを着た黒髪の筋骨隆々の男が倉庫の扉を破壊しながらサソリを見据える。
「なになに?彼氏さん?助けに来たのかな?泣かせるねー」
「リーダー!助けてください」
サソリの近くで倒れていた、金髪の男が助けを呼んだ。
「き、キサマ!」
「あらあら!俺様のかわいい舎弟をいたぶってくれたりしたわけ?覚悟は良いかなー」
不気味な笑みを浮かべると迷彩柄のタンクトップを着た男がユラユラと身体を揺らした。
男は、一瞬でサソリの視界から消える。
「!?」
サソリは咄嗟に湾内を突き飛ばし、距離を離した。
刹那、タンクトップの男がサソリの隣に移動して、常人よりも遥かにデカイ拳でサソリの頭を殴り飛ばそうとするが、反射的に右腕でガードをした。
「ぐっ!?」
倉庫に積まれたコンテナへと殴り飛ばされて、中身が散乱した。
辛うじて起き上がったサソリは痛みで顔を歪めた。
サソリは、なんとかガードしたがダメージを少しだけ軽減したに留まる。
何だコイツ!?
移動が見えなかった
「さ、サソリさん!!」
湾内が心配そうに叫んだ。
タンクトップの男は、ファイティングポーズを取りながら、その場で身体を慣らすようにジャンプをしている。
「あらあら!俺様のパンチを喰らっても起き上がってくるなんて久しぶりねー。少しは楽しめそうねー」
変に間延びした特徴的な言い回しでサソリを挑発するように指を振っている。
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