第30話 憤怒
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渡す。
「湾内?」
サソリは振り返る、遠くに離したはずの湾内の姿を探す。
自分の中でもケガをしているとはいえ、飛ばして来た方だ。
湾内のような娘が追い付いて来れる速さではない。
サソリの脳裏に嫌な予感が走った。
「ま、まさか」
サソリは、踵を返すと再び屋根を伝いながら、駆け足で湾内と別れた場所へと走りだした。
屋根から息を切らしながら飛び降りていくと、サソリが変化の術を使った路地裏には、数人の人集りが出来ていて、風紀委員と一般学生が話しをしている。
「ここに常盤台の子が?」
「はい、入っていきました。そのあとで何かを物音がして、何かあったんじゃないかと」
書類に確認事項を書き込んでいる。
「うーむ、それだけの情報だと我々は動けないな。一応、見回りをしてみますが」
角刈りのジャッジメントが頭を掻きながら、難しい顔をしてペンで紙をクセのように叩いた。
サソリは、角刈りの男を押し退けて路地裏の奥に入る。
「どけ」
「な、何をするんだ!」
サソリの視界に、先ほど湾内が買っていた買い物袋が汚れて転がっているのを捉える。
サソリさん喜んでくれますかね
サソリさんの好きな食べ物は何ですか?
サソリさん
サソリさんとお付き合いしたいと思いますわ
思い出すのは、昨日の湾内の姿だ。
オレのせいだ
オレが湾内を遠ざけたからだ
クソ!何をしているオレは
サソリは、抑えきれない怒りを殺気を身体から放出しながら、路地裏の奥に入っていく。
静かに己の中で殺意を認めながら、サソリは歩き出した。
忍独特の悟られぬ歩き方で確実にアジトを追い詰めるように
「き、君!そこに行ったら」
角刈りのジャッジメントが大きい声でサソリに注意を呼び掛けるが、サソリは一瞥もせず、光の射さない奥へと消えて行った。
何処のどいつだ
覚悟しろよ
そこには、人間としてのサソリではなく、犯罪請負組織「暁」の一角を占める残忍な忍。
殺した相手の返り血で大地が真っ赤に染まった事で広まった通称
赤砂のサソリがいた。
******
不良の男三人は、湾内をコードを纏めて留める結束バンドで湾内の手足を縛って、路地裏の中にある使われていない倉庫へと運び込んだ。
「んーんー!」
猿轡をされたままで湾内は、出来る限り暴れるが手足を縛られ身体の自由が利かないため、ただ地べたを這い回るだけだ。
「さてと、一応リーダーに伝えておくか?」
「そうだな。怒らせるとマズイから」
「まさか常盤台のお嬢様が捕まえられるなんて運が良いですね」
金髪の男がタバコを吹かしながら、灰を落とす。
「んーん!」
湾内のクセッ毛を無造作に掴むと、無理矢理顔を持ち上げた。
恐怖で震える身体に目には涙を溜めている。
それ
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