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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十九話 運、不運
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だと思いますが、勝敗は判りません」
「そうだな。……多分勝てるだろう、ミューゼル大将はミューゼル上級大将になる。その時点で宇宙艦隊副司令長官に推挙するつもりだ」
「……」
宇宙艦隊副司令長官……。

「卿の編制した二個艦隊だが、今度の戦いで功を上げれば指揮官たちは昇進させる。ミューゼル大将の配下に置くつもりだ」
「!」
「新しい副司令長官には新しい指揮官が要るだろう。私と共に戦ってきた古参の指揮官では、彼も使い辛かろう」

「最初からそれをお考えだったのですね。道理で二個艦隊の編制をすんなりと受け入れられた訳です」
「渡りに船ではあったな」
そう言うとミュッケンベルガーは苦笑した。俺も笑わざるを得ない。
「年が明けたら、彼に遠征を指揮させる。勝てば、元帥位と宇宙艦隊司令長官が彼のものになる。私はその時、引退するつもりだ」

「……」
「卿はミューゼル大将を助けてくれ」
「……承知しました」
「それとユスティーナを説得してくれ、あれに泣かれるのは辛い」
「承知しました」

元帥との話を終え、部屋を出る。ユスティーナが待っていた。
「いかがでしたか。養父は出兵を取りやめてくれたでしょうか?」
「……申し訳ありません。残念ですが説得は出来ませんでした」

「そんな」
ユスティーナの顔が悲痛に歪む。こんな顔は見たくない。
「今回だけです。次はありません。ご理解ください」

「でも」
「大丈夫です。元帥は必ず無事に戻ってきます。その後はずっとオーディンでフロイラインと一緒に居ます。だから今回だけは元帥のわがままを許してください」

ミュッケンベルガー邸を辞去し、俺は暗澹たる気持ちで兵站統括部に戻った。何故気付かなかったのだろう。帝国暦486年の第四次ティアマト会戦を最後にミュッケンベルガーの軍事行動は無くなる。そして帝国暦487年はラインハルトだけが軍事行動を起す。

宇宙艦隊の半分を奪われた男が何故、軍事行動を起さなかったのか。本来なら張り合うように遠征を起してもいいはずだ。アスターテ会戦で帝国が動員した兵力は二万隻。ミュッケンベルガーが軍事行動を起す余力は十分にあったろう。

ミュッケンベルガーは病気だったのだ。そのことが彼の軍事行動を止めた。彼がアムリッツア会戦以後、引退を決めたのもラインハルトの器量を認めたこともあったが、健康が主原因だったのだろう。

どうしたものか。今の時点で俺が取るべき道はなんだろう。ラインハルトを失脚させることが出来るだろうか? 難しいな。ミュッケンベルガーはラインハルトを後継者にしようとしている。もみ消すか、不問にする可能性が高い。

リヒテンラーデ侯もミュッケンベルガーが病気だと知れば、次の宇宙艦隊司令長官に恩を売ろうとするに違いない。彼にとっては実戦力を
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