序の章
ハジマリ×ワカレ
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レでしょ、なんか選ばれたんでしょ?」
彼はあからさまに、こちらからもわかるほどにあからさまに溜息を一つ吐くと、頭を掻く。
「まあ、別に聞き流しても良いんですけど……こっから話す内容は重要事項なのでちゃんと聞いてて下さいよ」
私はそれに頷くと、順応性高すぎだろコイツ、等という天使君の独り言を聞かなかった事にして、続きの言葉を待った。
流石に重要事項は間違えたり適当に説明するわけには行かないのか、天使君は懐からカンペ、ではなく丁寧に封筒に入れられ、蝋で封をされていた便箋を取り出すと、それを開いて読み上げる。
「今から、あなた様……沢城優梨佳様にはこことは異なる世界線へと移動して頂き、そこで暮らして頂きます。その世界へ移動した時、自動的にあなた様はその世界からは例外を除いて出られないものとします」
天使君の話は、まだ続く。
私はそれを、普段からしてみれば割と真剣に聞いていた。現実味は未だに無いものの、本能的にそれが自分の命を守る上で大切だと判断したから。
「尚、これは本人の意思決定に関係なく決められた事柄ですので、あなた様にはこの先を聞くか決める権利があります。但し、あなた様は現実には現在生死をさ迷っている状態。断れば目覚めること無く、余生を意識のある夢の中で過ごしていただくことになります」
ここで、天使君は言葉を切った。恐らく私の方に向いた視線は、どうするんだと聞いてくる。
「それ、断ったら目覚めることが無いって事なんだよね」
「……えぇ。残念ですが、目覚めることはありません」
やはり平坦な、感情のない彼の声に、心に冷たいものが流れ込むような感覚を覚えた。
私はそっと目を閉じて、これまでの、かくも短い人生を思い返す。
幼稚園の時、友達と一緒に砂場でお城を作ったこと。小学生の時、初めてのテストで満点をとったこと。……中学生のときに、初恋をしたこと。親友が出来て、なんでも話し合ったりもしたっけ。高校も一緒で、私が倒れ込んだときにまっさきに心配して駆け寄ってくれたのも彼女だった。
――楽しい、十七年間だったなぁ。
目を開いた時には、私は物凄い涙が溜まってて、それを拭って、無理矢理明るい声を作って言った。
「聞くよ。……この先の、言葉。あ、説明か。私は、どうすればいい?」
「……それが、あなた様の回答ですね。わかりました。説明いたします」
その回答に、彼は何処か寂しげな、哀しむ様な声で、頷く。
泣いてるのがバレているのだろうか、それとも、何か別の理由が有るのだろうか。けれど、私が聞くことはなかった。聞いては行けないような気がした。
「まず、あなた様には行って頂かなくてはならない世界があります。その世界であなた様は、数々の受難と別れに出会
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