3部分:第三章
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「それも大目にでしょうね」
「いい社会ですね、日本は」
「一度来てみる?楽しいわよ」
「お金が貯まりましたら」
その屈託のない笑みで答えるのだった。
「そうさせてもらいます」
「是非そうするといいわ。さて」
「ええ」
ここで二人の顔が変わった。相変わらずにこにことした勝矢と暗くなり果てたラーマ。二人は遂にその寺の前にまで来ようとしていたのだった。
「いよいよね」
「そうですね」
ラーマは勝矢の言葉に対して答える。
「入りますか」
「やっぱり怖いのね」
「正直に申し上げましてその通りです」
その暗い顔ではっきりと答えるのだった。
「本当に鬼女が出て来たら」
「まあその時はその時ね」
だが勝矢の態度は相変わらずあっけらかんとしている。まるで平気だ。
「鬼が出て来たら食べられるだけね」
「随分落ち着いていますね」
「こういうの。慣れてるから」
そのうえでの言葉だった。
「だからよ」
「慣れてるんですか」
「世界中回ったのよ」
勝矢は言う。
「その中には危険なことも随分とあったから」
「それでですか」
「もっとも終わったら男の子だったけれど」
「じゃあ今回も」
「ええ、行くわよ」
ここでまたしても好色そうな笑みになる。そのおちょぼ口も垂れている目元も気持ち悪く曲がる。如何にもといった感じの顔だ。
「タイの男の子の細やかな肌があたしを待っているわ」
「お好きですねえ」
「目指すは男版ドン=ジョバンニ」
実に大胆な言葉だ。
「カタログまであるのよ」
「それでどれだけ進んでるんですか、それは」
「アメリカで三四人、中国で一九人」
「ほう、それはかなり」
「イギリスで七六人、ドイツで二四人、ベトナムで六二人、フィリピンで七九人」
かなり多い。国も様々だ。よく見たら自分でカタログを出して楽しげに言っている。
「このタイじゃ二六五人」
「おおっ!?」
「日本じゃ遂に一〇〇〇にいったわよ」
「本当の数字ですか!?それって」
「本当よ」
どちらにしろ人間離れした数字である。
「遂にね」
「随分堪能されていますね」
「何でも極めないと意味ないわよ」
それが勝矢の哲学らしい。
「この道だってね」
「では仕事が終わった後に」
「ええ。そうしましょう」
そう言いながら一歩前に出た。寺の中に入ろうというのだ。見れば庭も草ぼうぼうでかなり荒れ果てている。少し見ただけでかなり危なそうだ。
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