第二部
狩るということ
じゅうはち
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と似かよった音源を捉え、その方角を示す。
こちらへと近付いてくる速度はかなり早く、先日遭遇した面白生物など比べ物にならない。
私と同じように木々を跳び、地を駆けてお仲間の元へと最速で馳せ参じようとしているのが分かる。
そして、そいつは私の前へとその姿を露にする。
……デケーな、おい。
腕をもいだ個体よりも一回りは大きいのと合わせ、より刺々しく、全体的に鋭角なのが印象的だ。腕に生えているノコギリ状の刃もより長く、波打っている。
「番……ね」
そう思い立って、小さい個体に目を向ける。
騎士団を襲った個体はこちらの個体で間違いないだろう。そして、大きい方の個体だが、若干人で言うところの腹部の膨らみが目立つ。
スキャンを開始してみれば、腹部の甲殻の下にカプセル状なった卵を抱えているのが確認でき、それに私は内心舌打ちをする。ゴキブリだゴキブリだとは思っていたが、これで確定的となった。
このカプセル状の卵、1つのように見えるが、この中にかなりの数の幼虫が入っており、それが生まれる瞬間など見てしまった際は、トラウマになること間違いない。
顎から威嚇音とおぼしき音を鳴らし、私を警戒しながら右腕2本を欠損しているオスへとを身を寄せていき、オスは甘えるように顔を擦り寄せる。
刹那、オスの首から上が綺麗になくなる。
「おいおい……」
流石の私もその光景に瞠目してしまう。
司令塔を失った体は、それでもバタバタと動き続けようとし、それを4本の腕がガッチリと拘束する。
もちろん、そんなことをするのはメスの個体しかおらず、ヤツはオスの頭部をまだ咀嚼しているのにも関わらず、口を開いて今度は胴体へと齧りついていた。
堅く弾力のある甲殻を意図も容易く噛み砕き、それを咀嚼する強靭な顎と、リミッターを失ったことによって暴れまわろうとする意思のない体を簡単に押さえ付ける膂力には呆れ返る。
そもそも思い返してみれば、ゴキブリは共食いをするものだった。
自ら産み落とし、産まれたばかりの幼虫すら腹が減っていれば貪り喰らい、特に日本ではその姿形はもちろん、病原菌の巣窟である不潔な生き物として忌み嫌われている、何とも業の深い生き物だ。
しかし、実は世界規模でみるとゴキブリの種類にもよるが、食用であったり愛玩ペットとしての側面の方が強かったりする。
まあ、私には理解できない領域であるし、理解しようとも思わないが。
それは人外になった昨今も変わらず、いまもって天敵であると認識しており、晩年その価値観に変化が訪れることはないだろう。
そんな醜悪と言っても過言ではない、いっそ化け物とも呼べるヤツらを二足歩行にした目の前のメスは、私に目もくれず一心不乱に食事を続けている。
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