1部分:第一章
[2/3]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
とオカマ言葉を使う男だった。現地で雇ったガイドの案内を受けて今バンコクにに来ていた。
「バンコクに来たのは最初じゃないけれど相変わらずいい街ね」
「そうですか。そう言って頂けると」
「可愛い男の子は多いし」
男は笑って言う。
「食べ物は美味しいし本当にいい場所だわ」
「そういえば勝矢さん」
「何かしら」
ガイドは彼を勝矢と呼んできた。彼もそれに応える。
「今回ここに来た目的は何ですか?」
「当然仕事よ」
にこにこと、だがはっきりとわかる好色そうな笑みを浮かべてガイドに答えてきた。
「ここに幽霊が出るお寺があるそうじゃない」
「ああ、あそこですか」
ガイドはそれを聞いてすぐにわかったようだった。
「あのお寺ですね」
「わかってるのね。それだと話が早いわ」
「って行かれるんですか」
「それの取材で来たのよ」
勝矢はこう彼に答える。
「だから行きたいのだけれど」
「お勧めはしませんよ」
しかしガイドはここで暗い顔をして勝矢に言うのだった。
「あそこは」
「偉いお坊様のお祈りを邪魔するからかしら」
「いえ、鬼女が出るんで」
彼はこう聞いていたのだった。
「姿を見たら三日で死ぬそうですよ」
「三日ね」
「犬も近寄りませんし」
犬まで話に出す。
「当然猫も」
「可愛い男の子は?」
「近寄る筈ありませんよ」
今度は何を今更、といった調子で勝矢に言葉を返してきた。
「もう誰も近寄りませんよ」
「そうなの」
「大きな音がしてそれに戸惑っていたら棺桶に引き擦り込まれるって言われていますし」
「怖いわね」
それを聞くと勝矢も少しだが顔を顰めさせる。
「それは」
「けれど仕事ですよね」
「ええ」
あらためてガイドの言葉に頷く。
「そうよ。こっちだって編集長命令なんだから」
「日本の雑誌っていうのは随分と無茶な仕事をやらせるんですね」
「うちの編集長は特にそうね」
少し考えた後でガイドに答える。
「それで有名な人だから」
「そうなんですか。それでそのお寺に、ですよね」
「案内して欲しいけれど駄目かしら」
「こっちも仕事ですから」
こう前置きしなければならないというところに今回このガイドがどれだけ乗り気ではないということかがわかる。とにかく嫌なのだ。
「引き受けさせてもらいますよ」
「お金は弾むから」
「日本人はだからいいんですよ」
とは言ってもタイ人特有のあの屈託のない笑みではなく苦笑いである。
「お金払いがいいから」
「若し悪かったらどうするの?」
「おさらばです」
左手でバイバイ、といった動作をしてみせる。
「お金の切れ目が縁の切れ目ですよ」
「シビアね」
「タイ人ですから」
今気付いたが彼は随分と流暢な日本語を話して
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ