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家庭教師
4部分:第四章
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がその流れが違っていた。
「どうにもこうにも」
「無理にでもわかるわよ」
 先生は無理矢理にでも強引な流れを作るのだった。
「これからのことでね」
「これからって」
「後ろ見ればわかるわ」
 また笑って義光に言ってきた。
「振り向けばいいわ」
「振り向けば」
「どうぞ」
「わかりました」
 その言葉に従って後ろを振り向くと。本当に彼女がいた。そうして義光の方を熱い眼差しでじっと見詰めていた。
「ここまでくればどうするべきかわかるわよね」
「はい」
 一つしかない。もうそれから離れることもない。
「行けばいいわ」
「あの、先生」
 義光は先生に顔を戻して言ってきた。
「まだ行かないの?」
「いえ、その前に」
 申し訳なさそうに先生を見て言うのだった。
「多くは言えませんけれど」
「御礼なんていいわよ」
 あっさりとこう返してきた。
「いいんですか」
「いいのよ。それよりも」
 目を前に向ける。彼女がいる方向に。
「早く行きなさい。御礼はそれだから」
「わかりました。それじゃあ」
「ええ」
 義光は深々と頭を下げると従妹の方へ行く。あとの流れはもうわかっていたので見るつもりもなかった。先生は踵を返して歩き去っていくのであった。
「これで一件落着ね。さて」
 ふと眼鏡を外して髪を解く。野暮ったいコートを脱ぐと。
 別人がいた。目がやけに奇麗で星みたいな光を放っている。風になびく髪は艶があり黒い光を放っている。コートの下は赤いセーターに黒いたけに丈の短い黒のタイトミニに同じ色のブーツ。ストッキングまで黒に統一している。スタイルもモデルを見まごうばかりだ。
「全く。私に地味に見せて欲しい、彼の目がいくからって」
 従妹の注文を思い出して苦笑いを浮かべる。
「そんな彼じゃないのに。全く女の子ってのは」
 自分も女なので気持ちはわかるが。それで言いたかった。
「困ったものね」
 合格したばかりの学生服姿の連中がその先生を見ていた。先生はその注目を心地よく受け取りながら帰っていた。その背中にハッピーエンドを見て。


家庭教師   完


                  2007・10・11

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