暁 〜小説投稿サイト〜
とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第29話 暗雲
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浮さん?」

サソリ泡浮は、黙って写真のデータを開いた。
そこには、サソリが助けた時の勲章である無残に壊れた巡回ロボットの写真がある。
他に、美味しそうにケーキを頬張ってご機嫌にしている湾内の写真。
学校での泡浮を取っている写真。
ベッドで横になって寝ている写真。
友達と楽しそうに会話している写真。

どれもがサソリに取って眩しく、尊い一瞬だ。

全てが彼女に取って大事な欠片だ。
奪ってはいけない
壊してはならない

闇の中で生きているオレなんかのために、闇の中に進んで来なくていい

サソリ泡浮は、御坂から教わったやり方で巡回ロボットの写真を消去に掛かる。
「な、何をしますの!?」
湾内は、血相を変えて携帯電話を奪い返そうとするが、サソリ泡浮は指を動かしてチャクラ糸を縫い付けて動けなくした。
「へっ?」

データにすれば数百キロバイトのデータ量。
ものの5秒で写真は完全消去された。
『消去完了』
冷たい四文字をサソリ泡浮は、湾内に見せる。
「ひ、ヒドイです泡浮さん!なぜサソリさんの写真を消してしまうのですか!」
動けない湾内は、涙を流しながら抗議する。
サソリ泡浮は、チャクラ糸で操って湾内の手を差し出させ、携帯電話を優しく返した。

「オレは、お前が思っているような人間じゃない」
驚くほど、冷たい声でサソリ泡浮は言い放った。
サソリ泡浮は、変化の術を解いた。
暁の外套を身に付けたサソリが湾内の前に姿を現す。

「さ、サソリさん!?なんでどうしてですの?」

「湾内......今日はずっと付けさせて貰った。結論から言ってしまえば、オレはお前とは付き合えない。付き合う資格がない」
サソリは自嘲気味に薄く笑った。
「わ、わたくし直します!サソリさんに見合うようにしますわ」

違う
資格がないのはオレの方だ

サソリは、指を動かして湾内を歩かせた。
自分から距離を取らせるように、静かにゆっくりと歩かせる。
「サソリさん!」
湾内が泣きながら、懸命に後ろを向こうとする。
サソリは、顔を伏せたままチャクラ糸の制御限界まで湾内を離す。

レベルアッパーで木山が伝えていた事。
「あの子達は、幸せになるべきだ」

湾内
お前は、幸せになるべきだ
オレなんかよりずっとずっと......

「ありがとうな」
そう呟いた所で湾内の拘束が解かれ、チャクラ糸から解放された。
慌て、振り返るがサソリの姿は見えない。
湾内は、息を荒くしながら走り出した。
先ほど寄っていた店舗。
歩いた道、サソリが立っていた場所。
しかし、サソリはどこにもいない。
まるで最初から居なかったかのように

「サソリさん!サソリさん」
路地裏を入り、制服が擦れようが関係ない。

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