第二部
狩るということ
じゅうろく
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の爪で掻きながら、今更ながらに愚痴を溢す。
いや、目下の問題はいま、この船内にいる彼女をどうするかである。保護した野生動物のごとく、快復してから自然へと還すのがベストか。
しかし、この船内を見られては、そう簡単な話でないのも頭が痛い。こちらに非がなくとも、何かしらの理由で私とこの船の存在が彼女の中で紐付いてしまうのは、それだけでリスクに繋がるのだ。
数日前、かの総隊長からの質問に対し、私の存在を約束通り秘匿してくれたことは事実だ。だが、それよりも高位の者からであったら?宗教的な事由があったとしたら?彼女の生命に関わることになったとしたら?考え出したら切りがない。
では、口封じに始末するか?と言われれば、だったら始めから助けるような真似などする必要もない。
つらつらと考えを巡らせている内に、どうやら部屋へと到着してしまったようだ。
結局考えは纏まることなく、私は部屋へと歩みを進めるしかない。
「あ、おはようございます」
そう言って、ベッドの上から頭を下げる。
目に見えるほどの疲労感を醸し出し、力無く笑うそれが余計に彼女の姿を小さくみせ、なんとも言えない気分になる。
昨日と比べると随分と落ち着いているようで、それだけが私の心を多少なりとも軽くさせた。
「昨日はすみません、取り乱してしまって。お見苦しいところをお見せしてしまいました」
「いや、私こそ配慮が足りず、すまないことをした」
僅かに頭を下げる私に、彼女は首を横に降る。
「あの、この腕と足はあなたが?」
その問いに私は首を縦に振って応える。
まあ、正確には私が貰い受けた医療ポットの性能であるが、それを伝えても仕方がない。どのように等と聞かれたら、取り敢えずは魔道具とかその辺りで誤魔化しておけばいいだろう。
「まさか、これもあなたが持っている魔道具の力ですか?」
はいきたっ!
「そんな……。そんな貴重なものを、どうして」
「それができる物を私が持っていた。それだけだ。右腕と右足だけの生活は大変だろう?」
「そ、そう言うことを言っているのでは……」
彼女の言いたいことは分かる。恐らく、魔道具でこういったものが存在はしているのだろうが、相当に高価な上に手に入れることもかなり困難なのだろう。また、一度だけ効果を発揮する使いきりとか、そういった物であろうことは想像できる。
「貴様は失った筈の左腕と左足が元に戻った。それでいいだろう」
「でも、私に返せるモノなんか……」
ああ、対価ね。
……そんな尻窄みにならなくてもいいじゃない。そんな不埒なこと考えてないから心配するなよ。
「それならば、私とこの場の一切を口外しないと誓え。いまはそれでいい」
私まじイケメン
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