壱章
誰故に 乱れ初めにし 〜中〜
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よ、その顔はよ?オレだって気になる女の一人や二人出来ても可笑しかねェだろ?」
予想以上に驚いた小十郎に対し政宗もまた動揺した。
「も、申し訳御座いません…こ、この小十郎、い、些か驚いておりますが決して動揺しては居りませぬ…断じて。」
今の今まで女っ気が皆無でひたすら剣術の鍛練に打ち込んでいる姿や男共と雄叫びを上げ戦場を駆け回ってばかりいた主の姿ばかり見てせいか、正直小十郎は面食らった。
「いやオメェ動揺しまくりじゃねぇか、そんなに驚くかよ?」
拗ねているのか、顎に手を当てながら政宗は軽く小十郎を睨み付け、暫しそっぽ向くが再び口を動かし始める。
「……ソイツの全てに魅入っちまったんだよ、…………人ならぬ魅力に、よ。」
僅かな間、あらぬ方向を見ていたが小十郎の方に顔を向けながら政宗は続けた。
「…とにかく喜多の行方が分かり次第アイツに伝えろ、要件はそれだけだ。」
「御意、……それではおやすみなさいませ。」
小十郎は未だ僅かに動揺の色を残して顔で部屋をあとにした。
一人、部屋に残った政宗は再び鈴彦について考えていた。
___彼女は容姿も極上だが、あの独特の色香には惹かれるものがある。
流石に本人の前では言う訳にはいかないが、なかなかstyleも良い。
不本意とはいえ斬り掛かって来た時、襦袢の胸元が開け透き通った艶のある白磁のような肌と僅かにに桃色に染まった、たわわな胸の谷間が目に入った。
…アレを『良いもん』と呼ばず、何を『良いもん』というのか。
思わずニュッと笑ってしまったが流石に独りでにやつくのは気味が悪いので出来るだけ真顔になるよう努力してみたが矢張り、にやけてしまう。
…そんな時だった。
「…………………!?」
只ならぬ視線を感じ、脇差を抜き、何時でも臨戦出来るよう僅かに立ち上がる。
そのまま戸口を見るが誰も居ないし誰も開けたような様子はなかった。
視線を移していくと縁側に丸い影が映って居る。
構えながらゆっくりと移動し影の持ち主の前まで移動した、
……………が政宗はフゥっと息をつき脇差を再び鞘に差した。
此方を微動だにせずくすんだ灰の瞳でじっと様子を伺うように見つめて来るソレは___
大きく丸々と肥え、顔の右が半八割れの猫だった。
「…ンだよ、驚かすんじゃねぇ…ニャン公よォ?」
政宗は猫の前に胡座をかいては座り込み、猫を抱き上げ膝の上に乗せる。
最初は全く生気が感じられず、よく出来た人形だと思ったが触感はまさに太った猫独特の脂肪の柔らかさ、そして生身の生き物の温もりだ。
片方の手で猫の頭をくりくりと撫でながら、ふっくらした頬をふにふにと触る。
猫は特に暴れる様子は無く、静かに膝の上で香箱座りをしながら喉を時折ゴ
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