第二百五十五話 帰りの旅その六
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「このこと、それがし忘れませぬ」
「上様に救って頂いたことを」
「何があろうとも」
それこそというのだ。
「忘れませぬ」
「それがしもです」
「徳川殿もですな」
「はい、何があろうとも」
それこそというのだ。
「忘れませぬ、この恩義はです」
「これからもですな」
「家が続く限り」
徳川家、この家がというのだ。
「忠義を尽くしていきます」
「そうあるべきですな」
「はい、必ずや」
「当家もです」
浅井家もと言うのだった。
「そうします」
「ですな、共にです」
「はい、忠義を尽くしていきましょう」
「何があろうとも」
織田家の幕府にというのだ、そしてここで。
長政は家康の身なりを見てだ、こうも言った。
「しかし徳川殿は」
「何か」
「いつもながら質素ですな」
「それがしの身なりがですか」
「服がです」
具足の下のそれがというのだ。
「足軽達の服を同じ生地ですな」
「いや、どうも贅沢はです」
家康は笑って長政に答えた。
「肌に合わぬので」
「だからですか」
「こうしてです」
服はというのだ。
「色は黄色にしていますが」
「あくまで質素にですか」
「しています」
そうだというのだ。
「それがしだけでなく」
「家の者全てがですか」
「そうしています、それがしは家臣には言っていませぬが」
「それでもですな」
「それがしについてきてくれてです」
そうしてというのだ。
「皆質素にしてくれています」
「それは何よりですな」
「それがしは果報者です」
家康は長政に笑ってこうも言った。
「そうした家臣達がいてくれて倅達もいてよき女房もいて民達もです」
「随分としたわれているとか」
「左様です、もうこれ以上の望みはありませぬ」
こうまで言う。
「これからも政に励んでいきます」
「ですか、では」
「はい、これからもです」
まさにというのだ。
「政に励んでいき」
「そしてですな」
「外で戦になれば」
その時もというのだ。
「喜んで出陣します」
「ですか、ですが外での戦は」
「それはですな」
「美麗の島、琉球はまず大きな戦なく手に入れられますので」
「後の呂宋等ですな」
「そこがどうなるかですが」
「そこでの戦となると」
日本と呂宋の距離、伝え聞くそのことから家康は考えそのうえで長政に述べた。
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