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戦国異伝
第二百五十五話 帰りの旅その一

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                 第二百五十五話  帰りの旅  
 帰蝶は周防からの早馬が届けた文を読みだ、市に笑顔で言った。
「間もなくです」
「兄上がですね」
「この城に戻られます」 
 こう笑顔で話した。
「勝たれました」
「左様ですか」
「はい、ではです」
「待ち遠しいですね」
 心から望んでいる言葉だった。
「実に」
「そうですね、ですが」
「はい、必ず戻られるので」
「待っていればいいのです」
 市にこうも言うのだった。
「この安土で」
「左様ですね、しかし」
「それでもですね」
「ここは待つのです」
「待つことも務めですね」
「そうです、上様は勝たれたのです」
 その魔界衆にというのだ。
「あの方々は」
「猿夜叉様も」
「ですから」
 それで、というのだった。
「待ちましょう」
「わかりました、では」
「宴の用意をしておきましょう」
 帰蝶は市に静かな声で告げた。
「これより」
「それでは」
「それでなのですが」 
 ここでだ、あらためてだった。
 帰蝶は市にだ、こうしたことも言った。
「ですがそれでもです」
「はい、兄上は」
「あの方はお酒を飲まないので」
「わかっております」
 妹だけあってだ、市もわかっていた。それで言うのだった。
「お茶をですね」
「それにお菓子もです」
「そうしたものをですね」
「用意しておきましょう」
「やはり兄上はそちらですね」
 酒と肴ではなくだ、ただ信長は酒は飲まないが酒の肴になる様な料理は食べる。味の濃いものを好む。
「お酒よりも」
「そうです、では」
「はい、兄上には極上のお茶を用意して」
「そのうえで宴を用意しましょう」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。
 帰蝶は文の内容を城の者達に話した、すると。
 誰もがだ、飛び上がらんばかりに喜んで言った。
「それは何よりです」
「そうですか、上様は遂にですか」
「まつろわぬ者達を滅ぼされましたか」
「そうされたのですね」
「そうです」
 その通りだとだ、帰蝶も笑顔で答える。
「ですから」
「はい、それでなのですね」
「これからですね」
「宴の用意を」
 あらためてだ、帰蝶はここで命じた。
「行うのです」
「上様が戻られた頃には」
 侍女の一人が言った。
「すぐにですね」
「宴が行える様に」
「わかりました」
「そしてです」
 帰蝶はさらに言った。
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