巻ノ四十 加賀の道その九
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「ご安心を」
「わかり申した、源四郎殿が仰るのなら」
「それならですか」
「それがしも安心です」
「それがしを信じて頂いているのですな」
「はい」
その通りという返事だった。
「ですから」
「それで、ですか」
「その言葉信じさせて頂きます」
幸村自身を信じているからというのだ。
「それではその様に」
「では」
こうしたことを話してだ、兼続は幸村達については安心することが出来た。越前での旅路も緊張したものだったが。
上杉家の者達は軽挙は行わなかった、そして民達もだった。
石を投げたりはしなかった、それを見てだ。
幸村は十勇士達にだ、馬を進めつつ言った。
「民達もな」
「はい、何かしてきてもおかしくなかったですが」
「それでもですな」
「あの者達はです」
「何もしませんでしたな」
「うむ」
それこそという返事だった。
「民達も抑えられているか」
「ですな、それぞれの領地を治める大名達に」
「加賀や越前でも」
「だからですな」
「ここまで何もなく進めた」
「そうなのですな」
「そうであろう、よいことだ」
ここでは安心して言った幸村だった。
「民達も軽挙妄動をせぬならな」
「お互いにですな」
「馬鹿なことをしないなら」
「それならですな」
「安心ですな」
「そうじゃ、それにじゃ」
ここでこうも言った幸村だった。
「これは若しじゃ」
「若しですか」
「関白様が何かな」
秀吉、その彼がというのだ。
「上杉家にしようと思われていれば」
「忍の者が、ですな」
「何処からか石を投げていた」
「そうしていましたか」
「それで馬鹿者が動けばな」
上杉家の中にいるそうした者がだ。
「いらぬことになっていたやも知れぬが」
「それはなかったですな」
「結局これまでです」
「その石は来なかったです」
「一つも」
「それもなかった、ではな」
それではというのだ。
「あの方もそこまでの悪意はないか」
「上杉家に何かしようとする」
「そうしたことは」
「上杉家に不始末があればそれを口実としてお取り潰しを言う」
そうしてというのだ。
「しかしな」90
「そこで、ですな」
「撮り潰さぬから」
「だからと言ってですな」
「直江殿をですな」
「寄越せと」
「そうした策もじゃ」
幸村は淡々と話していった。
「出来たが」
「それでもですな」
「関白様はされなかった」
「そうした策を」
「うむ、流石というべきか」
こうも言った幸村だった。
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