第2章:埋もれし過去の産物
第45話「自分を追い詰めて」
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僕は恭也さんの前で這い蹲っていた。
「ついでに言っておくと、俺は今回、御神流を一つも使っていない。純粋な剣の腕前だけでお前を相手した。...にも関わらず、この有様だ。」
「なん、で....?」
なぜ勝てない。そう思って、僕は声を漏らす。
「なぜお前が俺に勝てないか。...それは、お前の心がそれだけ追い詰められてるからだ。」
「.......。」
心が追い詰められてる?...あぁ、なるほど...。
「緋雪の...事か...。」
確かに、僕の心は追い詰められてる。だけど...。
「だからこそ、少しでも強くなろうと....。」
「...ふざけるな。お前のしている事は、強くなろうとしているのではない。...周りを顧みず、ただ自分自身を追い詰める愚行。...それだけの事だ。」
「っ.....!」
「自分を追い詰め、心に余裕がない。...そんな者相手に、俺が負ける訳がない。」
恭也さんの淡々とした言葉に、僕は氷のように頭が一気に冷めた気がした。
「....俺も、お前と同じような事をした事があってな。...父さんが事故に遭った時、俺は家族を護ろうと死に物狂いで特訓した。」
「........。」
「...だが、それは周りを困らせ、あろうことかなのはに孤独を味わせてしまった。」
そう語る恭也さんは、後悔するような、そんな表情をしていた。
「....そんな経験をした俺だからこそ、今のお前は放っておけない。」
「........。」
恭也さんは、恭也さんなりに親身になって僕の事を心配してくれていたらしい。
「...お前だって、分かっているだろう?周りを顧みず、無理して強くなった所で、お前の妹は喜ぶのか?報われるのか?」
「っ.....!」
...分かってる。分かってるんだ。
こんな事したって、緋雪が喜ばない事ぐらい...!
「お前がどれだけ悲しみ、どれだけ傷ついているかは俺には分からない。...だけどな、少しは周りを頼って、前に進め。...俺と同じ過ちを繰り返すな。」
「....はい....。」
恭也さんに言われて、目が覚めた。
...僕は自身が思っていたより、緋雪が死んだことに動揺していたんだな...。
「...すいません、家に帰って、一度自分の気持ちを整理してきます。」
「...そうする事だ。」
ふらふらと、少し覚束ない足取りで僕は家に帰る。
「(...椿も葵も、これが分かってたからあそこまで僕を説得しようとしてたんだな...。)」
泣きそうな表情になっていた椿を思い出す。
...後で、謝らなければな...。
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