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鬼の野球
6部分:第六章
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だ」
 また猟師に対して答えた。
「任せてくんな。面白いことしてやんだ」
「わかった。じゃあ楽しみにしとくべな」
 こう言葉を交えさせながら酒と猪を楽しんだオフの山篭りの一日だった。そしてその次のペナント。極楽は彼のこれまでにない活躍で日本シリーズを制した。相手は奇しくも虚陣であったが見事に初戦から四連勝を収め格の差というものを見せ付けたのだった。
 日本一になり胴上げが行われた。その時に彼も胴上げされた。そしてそれが終わってから彼ははっきりと宣言したのであった。球場において。
「おら、極楽にずっといるだ」
「極楽ですか」
「では虚陣には」
「何があっても行かないだ」
 グラウンドでマイクを受けてはっきりと宣言したのであった。
「絶対に。何があっても」
「行かれないんですか
「極楽だ」
 また言うのであった。
「極楽以外には行かないだ」
「そうですか。ではフリーエージェントは」
「行使しないだ」
 言葉は変わらなかった。
「そしてまた来年も虚陣が出て来たら倒してやるだ」
 それを聞いて観客もテレビの視聴者達も大騒ぎになった。ネットにおいては早速祭りになる。それだけの衝撃の発言であったのだ。
「今それを皆さんに誓うだ」
「わかりました。それでは」
「また来年も」
「んだ。日本一になるだ」
 宣言は続く。
「極楽で」
 これで全ては決まった。彼は極楽に残留した。日本国民はこのことに喜ぶばかりだった。何しろ彼は金に転ばずに心を取ったからだ。
 しかし。それを快く思わない輩もいた。その米輔である。
「虚陣を断るなんて何様なんだ」
 いきなり己のブログに書きだした。
「たかが選手が。何を考えているんだ」
 早速これは話題になりこの男のブログは批判の書き込みであふれ返った。忽ちのうちにとある巨大掲示板群の野球関係で話題になり集中砲火を浴びた。出ている番組にも抗議の電話やメール、ファックスが殺到し遂には番組をおろされテレビに出られなくなってしまったのだった。
「いい気味だ」
「自業自得だ」
 まさにそうであった。だがそれで懲りたり反省したりするような品性のいい人間の筈がなくまだブログ等で悪態をつくのだった。しかし当の真似得流はそんな男のことなぞ歯牙にもかけていなかった。まさに論語で言う君子と小人の如き差がそこにはあった。

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