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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十八話 葛藤
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のかと疑心暗鬼になられても困る。出兵前の挨拶みたいな形で行ってみるか。そこでちょっとケスラーにでも話しておこう。ロイエンタールに俺が接触するのは避けたほうがいいだろうな。変に勘ぐられても困る。ケスラーから話してもらえれば良い。

「中将」
「なんです、少佐」
「お客様です、ユスティーナ・フォン・ミュッケンベルガーと名乗っていらっしゃいますが」
からかう様な表情でヴァレリーが話しかけてくる。

「……今何処に」
「そこでお待ちになっています」
「応接室にお通しして下さい」
どういうことだ、なんだって俺のところに来る? 俺のことを怖がっているはずだが。

応接室に入り、差し向かいで座る。困ったな、何から話そう?
「御無沙汰しております、中将」
「あ、ああ、そうですね。本当に久しぶりです。……今日は天気もいいですね」
何か思いつめた表情だな。場をほぐさないといかん、そうだ、とりあえずは天気の話だ。これなら問題ない。次は……、次は健康の話だな。

「あの……」
「はい? 」
「お願いがあるのですが」
「は?」
ちょっと待て、何か涙目になってるぞ。でっかい眼がウルウルしている。

「養父を助けて欲しいのです」
「?」
ちょっと待て、そこで泣くな。元帥を助けろ? その前に俺を助けてくれ、頼むから泣くんじゃない。俺は何も悪い事をしてないぞ。

ユスティーナ・フォン・ミュッケンベルガーはボロボロ涙を流し始めた。厄介な事が起きたらしい。先ずは彼女の涙を止める事が最優先だろう。これをしないと話が進まん。しかし困った事にどうやれば涙をとめることが出来るのか、俺にはさっぱりわからなかった。



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