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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十八話 葛藤
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それにしてもあまり無茶はしないで貰いたいものだ……。
■帝国暦486年9月20日 ミューゼル艦隊旗艦 ブリュンヒルト 参謀長室 ウルリッヒ・ケスラー
私は一人、参謀長室で悩んでいた。今回の遠征で新たに編制された二個艦隊だが、あれの意味するところは明白だ。ヴァレンシュタインはミューゼル大将を切り捨てる気のようだ。例の一件でミューゼル大将の器量に見切りをつけたのだろう。
おそらく切り捨てた後、今回編制された艦隊の指揮官達を抜擢するつもりだろう。それだけの実力の有る男たちだ。それにしても良く集めたものだ。わずか二週間程度の期間であれだけの人材を集めるとは。
いや、違うな、以前から調べていたのだ。おそらくはミューゼル大将のために準備していたはずだ。自分、ミュラー、ロイエンタール、ミッターマイヤーもだ。彼の人材リストに入っていたに違いない。
ミューゼル大将もキルヒアイス中佐もヴァレンシュタイン中将に知られた事はまだ知らない。私もロイエンタール少将も口を閉じている。話すべきだろうか? 何度もロイエンタール少将と話をした。しかし結論は出なかった、唯一得た収穫は彼が非常に思慮深い人間だと言う事だった。ミューゼル提督が素直に中将に謝ってくれれば良い、だが出来なかったら?
中将は信頼されていないと言っていた。そうかも知れない……。ヴァレンシュタイン中将のこれまでの実績を見れば、到底ミューゼル提督の及ぶところではないだろう。しかし本人は自分の功績をたいした事とは思っていない節がある。大体出世欲も有るのだろうか?
一方ミューゼル提督は才能、野心、覇気いずれも傑出している事は確かだ。そんなミューゼル提督にとって野心も覇気も無いヴァレンシュタイン中将に及ばないとはどういう感情を引き起こすのだろう?
まして自分自身の功績をたいした事とは思っていないと知ったら。自分をちっぽけな存在に感じてしまうのではないだろうか? そして誇り高いものであればあるほど、自分にそのような思いをさせた相手を憎むのではないだろうか?
私が考えていた以上にミューゼル提督のヴァレンシュタイン中将への不信は強いのかもしれない。それとミューゼル提督のグリューネワルト伯爵夫人への想い。この二つを考えると謝罪は難しいかもしれない。
むしろヴァレンシュタイン中将に知られた事で暴走する可能性がある。私もロイエンタール少将もその中で苦しい立場に追いやられる事も有るだろう。厄介な問題だ。
それに、話してしまったらこのまま遠征に行くこと自体危険だろう。ミューゼル提督は私とロイエンタール少将を避けかねない。司令官と参謀長、分艦隊司令官が不和などになったら艦隊運営はバラバラになりかねない、自殺行為だ。ロイエンタール少将もそれを心配している。
ミューゼル提督を説得
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