第6章 流されて異界
第141話 迦楼羅の炎
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ている訳ではない。九つの首の動きをある程度の時間留める為に必要な威力を持つ術式を、異界化していない現実世界で発動させた時に周囲に起こす影響を考えると、かなり頭の痛い未来が待ち受けている。
戦後の原状回復にどれだけの手間が掛かるか分からないので……。
人間の器が知れる、かなり所帯じみた……と言うか、人類や世界の危機と、事後処理に自分がこき使われる未来とを天秤に掛けた思考に囚われた正にその瞬間、あらぬ場所から上空に向かい放たれる槍。更に、別の個所からは巨大な雷の気が発せられた。
そして、それと同時に攻撃が発せられた地点同士をつなぎ合わせるかのような龍気のラインが引かれる。形は五芒星とその頂点を結ぶ円。その中心に蛇神アラハバキが現界している次元孔を置く。
良し、我が事なれり、だ。これでようやく完全な地の利を得られた。自分の飛霊に任せたので、まず失敗する事がないと言う確信はあったのだが……。
それでも、安堵の溜め息にも似た息をひとつ吐き出す俺。確かに、飛霊の動きが阻止されて居たのなら、一心同体の俺にはリアルタイムでその情報が伝わって来ていたはず。しかし、現実にはそのような情報もなく、まして、俺の身に飛霊が受けたダメージがフィードバックされる事もなかったので、企ては順調に進んで居る事を理解していたのですが……。
何にしても、これで更に無茶な術式を組む事が出来る。それに現実界への影響も、この龍気のラインの内側……結界の内側ならば大きな問題は起こらない、と思う。
次なる一手の模索に掛かる俺。しかし、その一手が足りない。
大祓いの祝詞が完成すれば、一時的に過ぎなくてもアラハバキの魔界との間の絆を断てる可能性はある。
但し、その際にあの首がすべて健在ならば――
もし、俺が逆の立場なら、ある程度の首を犠牲にしてでも魔界との絆を維持しようと試みる。
アレがどの程度の知能を有するか分からないが、獣並みの知能だと侮っていて足を掬われる訳には行かない。
更なる迦楼羅炎の召喚と、さつきの放つ炎の合一で全体を焼く。
大祓いの祝詞を維持した上で? たったひとつの首を焼くのに、自分の身体の内側を丸焼きにし兼ねないぐらい扱いの難しい迦楼羅炎を今の俺が召喚する?
現実的ではない。下手をすると暴走する炎が傍に居る弓月さんまで巻き込む可能性も高い。
まして、さつきには現実界と魔界との間の絆を断ち切った後に、現世に残ったアラハバキの残滓を焼き尽くす役割を任せたい……と考えている以上、それ以前にあまり霊力を浪費するような術の行使を頼みたくはない。
先ずは自らに物理と魔法を一度だけ反射する術を掛け、その後、上空へ移動。
アラハバキの首を一望出来る位置から、クラウソラスの一撃で全体に瞬時では回復出来ないダメージを与える。
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