第6章 流されて異界
第141話 迦楼羅の炎
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遙かな高みから地上を睥睨する赤い……瞳。
昏き闇の向こう側にゆらり、ゆらりと揺らめく濃い赤い影。その中で不穏に輝く瞳だけが妙に浮き上がって感じる事が出来る。
圧倒的な存在。其処から強く感じる、息苦しくなるかのような猛烈な意志。世界の何もかもがその瞳の前にひれ伏し、ただただ許しを請う事しか許されていない。そのような重圧。
永劫に近い時を封じられ、現世に対して、自らの事を忘れた人々に対して怨に満ちた光を放ちながら……。
見鬼の才にて上空を感じる俺。ほぼ視力が回復したのかと思えるほど、自らの脳裏に結ぶ像は詳細で、その事だけでも、この場に顕われた蛇神の存在の力がうかがい知れると言う物。
現状は想定していた内容からすると最悪の状況。出来る事ならば、コイツが顕われる前にすべて終わらせたかったのだが……。
但し、最悪の内容だからと言って、ここでケツを捲って逃げ出す訳にも行かないし、当然のようにこの状態となる事を想定もせず……何も準備をしていなかった訳でもない。
しっかりと自らの両足で大地を踏みしめ、物理的なまでに高められた神威に抗しながらも、考えを纏める俺。
そう、それは至極簡単な策。大祓いの祝詞。これで異界との接点と成って居る次元孔を封じて仕舞えば、邪神の驚異的な回復力を封じる事が出来、後は残滓を倒せば終わる。
罪、穢れの一切を祓う祝詞。少なくとも、この祝詞にも日本の歴史と言う強い存在の力がある。アラハバキが信仰を失ってから久しい日本の現代社会であるならば、この十二月の末日に唱えられて来た祝詞が絶大な効果を発揮する事は間違いない。
奴……蛇神アラハバキについて俺が詳しい成り立ちを知らないと言う事は、おそらく歴史の彼方で消え去ったか、もしくは現在でも何処かで信仰が残っていたとしても、それは極少数による信仰。
対して、大祓いの祝詞は、俺でも知っているレベルのかなり有名な祝詞。
それぞれが今持って居る力は比べる方が間違って居るレベル。
そうやって、かなり簡単な事のように考えた刹那――
俺の施した霊的な砦の周囲に降り注ぐ霧。これはおそらく、先ほどまでこの高坂と言う街全体を包み込んでいた、そしてその後、召喚されたアラハバキを構成する呪力の一部として取り込まれた物。
――だとするとマズイ!
砦の周囲を取り囲む悪しき気配。この霧とも、闇とも付かない、何とも表現し難い虚無から立ち昇って来ていた何かに触れた時、いみじくも覚えた巨大な何モノかの体内に入ったかのような感覚は、正に事実だったと言う事。
最初から俺たちは蛇神アラハバキの体内に居た。薄く拡散した奴自身を構成する物質……呪力の中で戦っていた、と言う事ですから。
現実の言葉としては大祓いの祝詞を続け
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