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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二十二話 新人事(その2)
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に抗議はしたのですか?」
「いや、していないよ、ナイトハルト。無駄だからね」
「無駄?」
「気付かなかった、同盟軍が密かに艦隊を動かした。言い訳は幾らでも有る」
公の言葉に皆が苦笑を浮かべた。

「これから先、正しい情報が送られてくることも有るでしょう。しかし帝国と同盟の均衡が崩れつつある、フェザーンがそう考えている限りフェザーンから送られてくる情報を信用する事は危険です。鵜呑みにすると何処かで痛い目を見る事になる。」
「……」

やはり公もそれを考えたか……。これから先、何度かは正しい情報が送られてくるだろう。そうやってこちらを油断させる。その上で一部の艦隊を故意に秘匿してこちらに情報を流す……。特に反乱軍が動員を伏せた場合が危険だ。その秘匿した艦隊が別働隊として現れ勝敗を決する事は十分に有り得る。

皆が口を噤んだがややあってケスラーが口を開いた。
「敵の戦力が分からない状況で戦う事を強いられるという事ですか……。結構厳しいですな」

ケスラーの声は深刻な響きを帯びている。そして皆が厳しい表情をしていた。多分俺も同じだろう。反乱軍はこちらの戦力を知っている。それに引き替えこちらは反乱軍の戦力を知らない。目隠しをされたまま戦うようなものだ。

「今回の戦い、ワルキューレにはかなり無理をさせました。しかしこれからはそういう戦いが増えるかもしれません。何らかの対策を考えないと……」
「なるほど。……索敵を専門とするワルキューレの部隊、軽空母が必要かもしれない、或いは機体そのものも索敵に特化するべきか……」
俺の言葉に皆が頷いている。

「ミューゼル提督の言うとおりですね。戦闘詳報には提督が言った事と同じ事を書きました。大公から聞いたのですが帝国軍三長官もこの件については非常に危険視しているようです。或いは既に何らかの手を打っているのかもしれません、確認してみましょう」

公がココアを一口飲んで顔を顰めた。どうやら冷めてきたらしい。俺のコーヒーも温くなっている。それにしても俺が言った事と同じ事を戦闘詳報に書いたか。考える事は皆同じだな。問題は上層部に受け入れられるかだが……。

「お会いになるのですか?」
「明日、会うことになっています」
多分、今後の体制についての相談だろう。元帥、宇宙艦隊副司令長官か……。ミュッケンベルガー元帥との分担はどうなるのか、気になるところだ。

索敵の件も話に出るだろうな。ブラウンシュバイク公からの提言ともなれば帝国軍三長官も無視は出来ないはずだ。索敵の件、軍の動きは結構速くなりそうだ。悪くない、軍事に明るい人物が宮中の実力者と言うのは悪くない。

「ところでフォルセティは如何ですか」
つらつらと考えているとミッターマイヤーが公に話しかけていた。公の旗艦についてだ。

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