第二十二話 新人事(その2)
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帝国暦487年 4月 4日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 ラインハルト・フォン・ミューゼル
「それにしても無事暮らしておりますは良かったな、ミッターマイヤー」
「俺はそんな事を言ったのか、ロイエンタール。緊張して何を言ったか良く分からなかった」
応接室に笑い声が上がり、ミッターマイヤーが照れている。話題を変えた方が良いと思ったのは俺だけではない様だ。
「ところでフェザーンからは反乱軍からの情報が入らなかったと聞きましたが……」
一頻りミッターマイヤーを冷やかした後、ケスラーが公に問いかけた。皆も笑いを収め二人を見ている。フェザーンの件は俺も訊きたかった事だ。
「普通はフェザーンから自由惑星同盟軍の情報が入ります。そして同盟軍には帝国軍の情報が行く。しかし今回は同盟軍の情報が入ってきませんでした。どうやらフェザーンは故意に情報を止めたようです」
公の答えに皆が顔を見合わせた。
「帝国の敗北を望んだ、そういう事ですか」
「そうです、ケスラー少将。ここ最近帝国軍は優勢に戦いを進めている。帝国と同盟の勢力均衡を望んでいるフェザーンとしてはこれ以上同盟が敗れると均衡が崩れかねない、危険だ、そう考えたのでしょう」
淡々とした口調、穏やかな表情だが内容は重大だ。皆厳しい顔をして考え込んでいる。そんな我々を見て公がクスッと笑った。
「勝つほどに勝つための条件は厳しくなっていく、そんなところでしょう。どんなゲームでもそうです。現実も同じですね」
皆が笑った。僅かだが部屋の空気がまた和んだ。公とミュラーが昔よくやったゲームの名前を出すとロイエンタール、ミッターマイヤーも“あれは楽しかった”と言い出した。ケスラーとシュタインメッツが頷いているところを見ると二人もやった事が有るのだろう。俺は無い、多分キルヒアイスも無いだろう、今度キルヒアイスと試してみるか……。
ゲームの話が終わるとシュタインメッツが公に問いかけた。
「今回の件、偶然という事は有りませんか」
「いや、それは有りませんね、シュタインメッツ大佐。今回の出兵は帝国側の事情で行われたものでした。特に出兵情報の秘匿もしていません。フェザーンは苦労することなく出兵情報を得、同盟軍に伝えたはずです。当然ですが同盟軍は我々を迎撃するために出兵する事になる。フェザーンがそれを知る事が出来なかったとは思えません。まして今回同盟は五万隻近い大軍を動かしています……」
皆が頷いている、俺も同感だ。
「一部の艦隊の動員を秘匿することは出来ても全てを隠蔽するのは無理です。明らかに故意、ですね」
公の言葉に何人かが“うーん”と唸り声を上げた。公の言う通り全てを隠蔽するなど無理だ。しかし、一部の兵力の隠蔽なら可能だろう、という事は……。
「フェザーン
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