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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章転節 落暉のアントラクト  2023/11
9話 災禍を纏う凶刃
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 《迷いの森》の最奥、モミの巨木を抜けた先に口を開く洞窟型のダンジョン。
 グリセルダさんの痕跡は、その洞窟の入口で途絶えていた。眼前に広がる暗闇がこの時ばかりは気味悪く見えてしまう。
 迷路のような内部構造もさることながら、外の森と同様、同じエリアに一分と留まればランダムに周囲が別のエリアと連結するギミックを有している。加えて、出現するモンスターのレベル帯が軒並み高いものの、湧出場所と出現数の少なさから経験値効率が劣悪であり、極め付けには然したるレアアイテムや優秀な素材も発見されなかったという救いのない顛末もあってか、一般プレイヤーには敬遠される場所となっていた。

 しかし、大多数を占める《一般》が寄り付かないという点に着目すれば、周囲の視線を(いと)う者には(あつら)()きの《隠れ家》となろう。グリセルダさんがそんな周辺事情に明るいかはさておき、それを差し引いたとしても、安全マージンさえ碌に満たせていない上層のダンジョンに単身乗り込むなど、僅かばかりの時間とはいえ彼女と肩を並べた身からすれば違和感に尽きる。
 だが、それが第三者の関与に因るならば決して在り得ない話ではなくなってしまう。しかも、主街区で姿を見ていなかったことを鑑みるに北の村に宿を取った公算が高い。あそこは宿やその他サービスが軒並み安いものの、村の内部は圏外なのである。ダメージやデバフから保護されない領域だ。言うべくもなく、オレンジプレイヤー(犯罪者)が入り込むことだって可能だ。麻痺毒を盛られて寝袋に詰められれば、プレイヤーを運び出すなど造作もないだろう。グリセルダさんの性格からしても、何者かの害意に晒されたと仮定した方が納得できる。その害意の主が洞窟を根城にしているというのであれば、認めたくはないが説得力はより現実味を増すだろう。

 グリセルダさんを誘拐したであろう連中が丁重にここまで連れ出している、という点も無視は出来ない。
 現場に証拠を残さないという配慮か、自身の領域での殺害を嗜好としているのか、そのあたりの理由はどうでもいいが、少なくとも《殺す》という行為に手間を掛けられるとなれば、相手は少なく見積もっても殺害という行為に対してノウハウを保有している。つまるところ、まともであるとは考えられないだろう。このまま踏み込んで鉢合わせになったら嬉々として斬り掛かられるとも限らない。

 いざという時に出し惜しみはしないように心掛けるくらいしか出来ないだろうが、そう思うと気が滅入る。諸々の用意を済ませ、意を決してダンジョンに踏み込む。
 暗視スキルによる恩恵で洞窟内は壁面の凹凸が色彩を殺いだ視界に浮かび上がって見えるので視覚的にハンデを背負っているわけではないし、加えて通常であればドアの向こう側や女風呂の声を盗み聞きする程度にしか使われない《聞
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