第1章転節 落暉のアントラクト 2023/11
9話 災禍を纏う凶刃
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ら聞いてりゃ………お情けで前線にいるようなザコが粋がってくれんじゃねぇか!? お望み通りブッ殺してやるよォ!!」
怒声が奔り、先陣を切るメイス使いと他に十人ほどが吶喊する。その他はリザーブだろうか、それとも見物のつもりだろうか、下卑た笑みを浮かべながら静観の構えを決め込むらしい。
挑発に乗るのはこれが限度か。捌き切るにも限界というものがあるのも事実ではあるが………
「死ねェ!」
開幕、振り抜かれたメイスの軌道を愛剣で逸らし、続くシミターの三連撃と大剣の一撃は僅かに掠めたものの、《軽業》スキルの補正による回避動作もあり、直撃を避けて遣り過ごす。
ただ、先鋒を務めたメイス使いを凌いだだけであって後続に至っては未だ接触はなく、周囲を取り囲まれる格好となってしまう。
「ハッ、大口叩いた割には呆気ねェじゃねーか? もう逃げ場はねェぜ?」
「まだ倒してすらいない相手に、どうして勝ち誇っていられるんだ。俺には、それが不思議で仕方がない」
「まだワケわかんねェこと言える余裕があんのかよ。ホント、頭にくるよなァ!!」
今度は、俺を取り囲んだ全員で同時に襲いかかってくる算段らしい。
実に短絡的だ。作戦というにもお粗末で簡単すぎる。とはいえ、謂わば殺人鬼に囲まれているこの状況。俺だけでも逃げ出せるだろうが、グリセルダさんを見捨てることは出来ない。そうなれば、障害は全て払い除けるしかなくなるだろうか。
――――本当に気が滅入るというだけで済む話じゃない。
――――こんな行為を嗜好とする彼等は、やはり多くのプレイヤーにとっての害悪なのだろう。
「………あァ?」
突進するメイス使いの疑問符が耳に入る。
それもその筈だ。戦闘中、ましてや殺し合いの最中に手にしていた剣を放り捨てれば、それは正気の沙汰とは到底思えないだろう。
だが、次の瞬間に彼等を迎え撃った《五連の剣閃》を、片手武器Mod《クイックチェンジ》によってオブジェクト化され、コートの下から新たに逆手持ちで抜刀した毒剣が纏う赤と紫の光芒を以て、ノックバックを受けて弾き返されたメイス使い達への返答とした。
「………お、脅かしやがって………ダメージもロクに出せねェソードスキルなんざ怖くねェ!?」
「アンタは羨ましいな」
「あァン!?」
威圧的な怒声に、思わず深く溜息を零す。
あまりに短絡的で粗暴で、自身の絶対性を僅かたりとも疑わない。しかし、その塗り固められた視界の向こう側、この仮想空間で構成された世界の裏側がどれだけ平等で残酷か、彼等は知らなかったのか――――
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