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もう一人の八神
新暦76年
memory:02 見た夢は追憶で
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「やっぱり……。申し訳ないけど君の戸籍を調べさせてもらってたんだ」

それについてフェイトさんから話があった。
まあ、簡単にまとめたら『地球』には私の戸籍が存在せず、何者なのかわからない状態だった、と。
それからも簡単な質問や確認もあり、それらを終え一息ついたときだった。

「悠莉君はこれからどうするつもりなんや?」

「これから、とは?」

「そのまんまの意味や。管理局の技術じゃ並行世界への移動なんて不可能。せやからこの世界でどうやって生活していくかや」

「はやて?!」

ストレートすぎる言葉に驚くフェイトさんをよそに姉さんはまっすぐ私を見て答えを待った。

「……そうですね、放浪という手もあるでしょう。お師匠たちに生きてくために必要なことを教わりましたから」

「お師匠?」

「向こうで私の面倒をみてくれた親代わりというか家族です」

「え? それって……?」

「私にもいろいろとあるんですよ」

これ以上自分の過去を話さないと拒絶。
それを感じ取った二人は口をつぐんだ。
暫く沈黙が続いたが姉さんが話を戻した。

「……つまり悠莉君は行き当たりばったりで物事を決めて過ごしていくんか?」

「この世界に頼れる人なんていませんし。それに独りには慣れてましたから」

この時の私は憂いを帯びた表情だったと姉さんは言っていた。
そして、姉さんは静かに何かを考え始めた。
黙って姉さんの答えを待つ私。
心配そうに私と姉さんを交互に見るフェイトさん。

「……よしっ、決めた!悠莉君、私の家族にならんか?」

「……はい?」

「はやて?!」

フェイトさん二度目の驚愕。
こればっかりは私もすぐには頭が回らなかった。
だけど姉さんの言ったことが理解できると思ったことを言った。

「どうしてです? 私と八神さんは赤の他人ですよ? なのにどうして……」

「なんでやろな? 自分でもようわからん。でもな、この考えが私の中で一番しっくりくるんよ。それにな、」

姉さんは私に笑みを向けて言った。

「独りでいることがどれだけ辛いことなんか私もよう知っとる。悠莉君を独りにはできん」

「っ!?」

この時、一瞬だけ姉さんがお師匠たちと被った。

「それにな、家族いうんはお互いに迷惑かけあって助け合ったりするもんやと思っとるよ」

―――悠、お前はお前の道を進めばいいんだよ。

どこからお師匠の声が聞こえた気がした。
ハッとして辺りを見渡したが当然姉さんとフェイトさんしかおらず、二人は私を不思議そうに見ていた。

「どないしたん? もしかして嫌、やったか?」

「……お師匠の声が聞こえた気がするんです」

「お師匠さんの?」


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