第九話 戸惑う心その三
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「行くのね」
「そうするよ」
「それじゃあ」
「行ってらっしゃい」
笑顔でだ、弟を送る言葉を出した。
「頑張ってくるのよ」
「そうしてくるね」
「姉さんもいるし、それに」
「院長さんもだね」
「龍馬君もいるわ」
優子は彼の名前も出した。
「あの子もね」
「龍馬もだね」
「龍馬君は絶対に貴方を見捨てたりしないわ」
断言しての言葉だった。
「それはわかるわね」
「うん、龍馬は人を裏切ったり見捨てたりしないよ」
「義理堅い子よ」
「そうだよね」
「だからあの子も頼りにするのよ」
「けれど」
そう言われてもだった、優花は。
戸惑うものを露わにさせてだ、姉に言った。
「龍馬にこのことは」
「言えないわね」
「とてもね」
こう俯いて言った。
「言えないよ」
「そうよね、こうしたことは」
「言えば。龍馬は信じているけれど」
「それでもよね」
「何処か、心の中で」
生まれて最も深刻な顔になっていた、その顔でだ。
優花は姉にだ、こう言ったのだった。
「龍馬がこのことを知ったら」
「信じていても」
「怖いよ」
「ええ、そうした気持ちはね」
「あるよね」
「姉さんについてもそうでしょ」
優花はあえて問うた。
「それは」
「そう言われるとね」
「そうなんだね」
「だから暫くね」
その時のことをまた言った優子だった。
「悩んでいたのよ」
「やっぱりね」
「勇気はね」
この心はというと。
「出したくても出せない時があるわね」
「確かに」
「ええ、すぐに出せない」
「それがね」
「あの時の姉さんだったんだね」
「覚悟を決める」
優子はこうも言った。
「それはね」
「時として勇気が必要で」
「姉さんは勇気を出せなかったのよ」
「そうだったんだね」
「私も優花を守りきれるか」
真剣な顔で言う。
「そして弟、妹になる貴方をね」
「僕を・」
「受け入れられるか」
「わからなかったんだね」
「こうした話があることはね」
そのこと自体はというのだ。
「知っていたわ」
「実際にだね」
「そう、現実としてね」
男が女になっていく、そうしたことはというのだ。
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