第二百五十四話 決着その九
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「朝廷に敗れそしてじゃ」
「神武帝に敗れか」
「そこからまつろわぬ者になりじゃ」
「姓もか」
「後に蘇我氏に敗れあの者達が名乗った」
その彼等の姓をというのだ。
「我等こそが真の蘇我氏じゃ」
「そうであったか」
「後にあの家は嫡流は滅んだがな」
大化の改新によってだ、蘇我入鹿も父の蝦夷も他の嫡流の者達はこの時に中大兄皇子後の天智帝に全て討たれている。
「しかしじゃ」
「御主達はか」
「こうして生き残っておるわ」
「それでまことの蘇我氏というか」
「如何にも」
「まさか蘇我氏にそうした話があったとはな」
「元々この姓は我等の一族の棟梁のものであり」
老人はさらにだ、信長に話した。
「他の十一家も蘇我家の血族であった」
「そして御主はその棟梁か」
「十二家、そして魔界衆のな」
「そうであるな」
「そしてわしの名は闇」
老人はこう名乗った。
「これがわしの名じゃ」
「一文字か」
「一族の棟梁の名じゃ」
その闇という一文字の言葉こそがというのだ。
「それを受け継いでおる者じゃ」
「今そこまでようやく知ったわ」
「それは何よりじゃな」
「御主のこともわかった」
今まで知ることのなかったその名もというのだ。
「ではじゃ」
「このわしをか」
「あらためて言おう、倒す」
こう告げたのだった。
「覚悟はよいな」
「御主はわしが倒す」
老人、蘇我闇は今もその目を血走らせていた、そのうえで言うのだ。
「何としてもな」
「まだそう言うか」
「それがわしの考えじゃ、ではな」
「ここでか」
「生きてやろう」
信長を倒してというのだ。
「では行くぞ」
「話すことはこれで終わったな」
「お互いにな」
「では行くぞ」
信長は陣羽織を風になびかせてだ、そうして。
槍を構えてだ、闇に向かった。闇もその武器を手に信長に向かう。
光と闇が交差した、そして。
両者は交差したその舟のそれぞれの端で暫し動きを止めていた。しかし次第にだった。
闇が前に崩れそうして。
その場に倒れ込んだ、全身から血を吹き出して。
そして右膝をつき血の海の中で己の背の方にいる信長に問うた。
「何をした」
「何もとはない」
信長は振り向くことなく闇に答えた。
「わしはありのまま槍を振るった」
「そしてわしの全身をか」
「切った」
その槍の刃でというのだ。
「そうしただけじゃ」
「そしてか」
「御主はそのわしの槍に切られてじゃ」
「敗れたというのか」
「その通りじゃ」
こう闇に答えた。
「これでわかったか」
「おのれ・・・・・・」
闇は信長の話を聞き呪詛する声を出した。
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