巻ノ四十 加賀の道その五
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「そうなってはどうにもならぬ」
「ですな、我等は凍え死ぬことはありませぬが」
「そこまで身体は弱くありませぬが」
「それでもですな」
「身体が冷えたあまり動けぬ場合もある」
「それも厄介ですな」
「それで動けなくなってはどうにもならぬ」
幸村もこのことはよくわかっていた、上田にしても冬は寒く雪が実に多いのでそのことから知ったことである。
「だからな」
「雪の冷たさも頭に入れ」
「それから身を守りつつですか」
「戦う」
「そうせねばなりませぬか」
「蓑や編笠、革を着てな」
そしてというのだ。
「手の指等も守るべきじゃ」
「指もですか」
「刀や手裏剣等を使う為に」
「そうした場所もですか」
「さもなければ戦えぬ」
とてもというのだ。
「暑い時は軽い身なりで、だしな」
「その時その場に応じてですか」
「服を替えて」
「そうして戦うべきですな」
「そういうことですな」
「うむ、そして勝つ」
戦にもというのだ。
「それが肝心じゃ」
「雪に向かうやり方もある」
「ただ嫌がるのではなくですか」
「その雪をどう使うのか」
「それが肝心ですな」
「それも戦じゃな、それぞれの時期や土地を活かして戦い勝つ」
その戦にというのだ。
「戦をするのならば」
「出来るだけ戦は、ですな」
「殿はいつもそうも仰っていますな」
「せぬに限る」
幸村は決して戦を好む者ではない、むしろ嫌いである。それでこうしたことも言うのだ。
「多くの者が傷つくからな」
「だからですな」
「避けるべきなのじゃ」
「仕方ない場合以外は」
「そうあるべきですな」
「信玄様もそうであられた」
彼が今も敬愛するこの英傑もというのだ。
「不要な戦はされずだ」
「戦は出来るだけ、でしたな」
「信玄様は避けられていましたな」
「そして必要な時は軍配を握られ」
「懸命に戦われましたな」
「拙者もそうでありたい」
その信玄の様にというのだ。
「だからじゃ」
「戦はせぬに限る」
「そしてするとならば勝つ」
「目的を達するのですな」
「そうする、ではな」
ここまで言ってだ、そしてだった。
幸村は十勇士達に確かな声で答えた、そのうえで。
彼等は旅の中で美味なものや酒も楽しみその地の特徴を見ながらだった。そのうえで都に向かっていた。
越後から越中、そして加賀に入ると。
不意にだった、上杉家の者達の顔が変わった。それを見てだった。
霧隠は納得してだ、こうしたことを言った。
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