第二十八話 魅惑の妖精亭にて
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家がある所よ」
相手は五歳という事もあって、ママゴトの延長みたいな酒の相手だったが、ジェシカは甲斐甲斐しくマクシミリアンの相手をした。傍から見れば年の離れた夫の世話を焼く幼な妻に見えたかもしれない。
……
マクシミリアンが『魅惑の妖精』亭に出入りする様になった時期は、ちょうどジェシカの母が亡くなり塞ぎこんでいた頃だった。
『水化』で変身して、酒の飲める場所を探していると、『魅惑の妖精』亭の前で一人の少女に出会った。
「そこのお嬢ちゃん、この店は飯も食えて酒も飲めるのか?」
「そうよ、看板見れば分かるでしょ。『魅惑の妖精』亭……何百年と続く店よ」
「そうか、ありがとう……ところで、何でそんなに暗い顔をしてるんだ?」
「別にどうもしないわ」
目の前で泣きそうな娘が居たら、放っておけない性質のマクシミリアン。
少女を励ます為に、水の魔法で作ったシャボン液と、道端に咲いていたタンポポの茎で作ったストローをプレゼントした。
「なにこれ?」
「シャボン玉だ、遊び方はこうやって……」
シャボン液をそこら辺に転がっていた木杯に入れ、ストローでかき回した。
マクシミリアンは、ストローを吹くとシャボン玉が屋根まで飛んだ。
「わぁ……」
ジェシカは驚きの声を上げた。
「遊び方は分かったろう? ほら、あげる」
「いいの?」
「かまいやしないよ」
「ありがとう!」
にっこりと子供らしい笑顔になった。
「名前教えて、『魅惑の妖精』亭で食べるんだったらサービスしてあげる。私、ジェシカ。この店の娘だから」
「親御さんに悪くないか? まあ……いいか、オレは下町のナポレオンだ」
「変な名前」
「ほっとけ」
ハハハ、と笑いあい。ジェシカはシャボン玉を吹こうとタンポポのストローに口をつけた。
「関節キスだね」
「ませた娘だな」
ジェシカが作ったシャボン玉は、狭い路地裏から青い空へと昇っていった。
「……お母さんの所へ届くといいな」
とつぶやいた事を、1ヶ月経った今でも覚えている。
十分に料理と酒、女の子(幼女)を堪能したマクシミリアンは、支払いを済ませ『魅惑の妖精』亭を出た。
店を出る際に、酒の相手をしてくれたジェシカにチップとしてエキュー金貨を1枚渡した。
「ほら、チップだ」
「ありがとう、また来てね、待ってるから」
「ああ、またな」
ジェシカはマクシミリアンの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
☆ ☆ ☆
ほろ酔い気分でブル
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