暁 〜小説投稿サイト〜
俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
降り積もる灰燼から
44.トライアングルハーモニー
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だろうか。

「あの、アズ様……オーネスト様が言ってた『科学』ってなんでっしゃろか?アタシ、学がねぇからろくすっぽワカンネーんですけど」
「ん………ああ、そうだな」

 オーネストは「たまにはお前が説明しやがれ」と言わんばかりにこちらを一瞥し、優雅な手つきでフレンチトーストを食べ始めている。俺もあまり説明上手ではないが、頑張って説明してみよう。

「火が燃えるのには空気が必要で、火を消すには水をぶっかけるのが一番早い。これは分かる?」
「はいっ!アタシもメイド修業時代に何度かカーペットに火を放ってクソ師匠にキレられたんで!!」
「や、火傷しなくてよかったね。で、ええと………じゃあ何故空気があると火は燃えて、水をかけると消えるのか。これは分かる?」
「いいえっ!脳みそツルツルのアタシが火に関して分かるのは『熱い』、『明るい』、『料理の命』の三つまでなんで!!」
「あはは………まぁ、オラリオに限らず普通の人達はそんなこと逐一疑問に思わないよね。でも実際には理由がちゃんとある。空気がないと火が燃えないのは、大気中の酸素がないと燃料となる物質と連鎖反応でエネルギーを発生させられないから……つまり火を燃やし続ける材料になってるからだ。そしてその材料と燃料の間に水をぶっかけると、連鎖反応が遮断されてしまう。だから水で火が消える」
「………………」

 ぼしゅー、とメリージアの耳から煙が噴き出ている。まだ小学校高学年レベルだと思うのだが、彼女にとっては早速難し過ぎたらしい。

「つ、つまりね。世の中で起きる自然現象ってのはそうやって何かしらの理由をつけることで説明できるっていうスタンス……それが科学なんだよ」
「つまり、何かと理由を付けたがる学者みたいな?」
「うん、まさにそれ」

 実際には俺達の世界とこの世界では学者のレベルが全然違う。それは、この世界ではあらゆる現象が『神』や『精霊』といった世界観に基づく解釈を行っているからだろう。神の奇跡にも精霊の加護にも原理は求められず、そういうものとして解釈されている。そこに疑問を挟む余地はない。それは人には理解が及ばない高尚な領域なのだ。

 だが科学は違う。

 科学ってのは何でもかんでも理由をつけて順序立てて解明しようとする。俺達の想像も及ばない世界であっても何かそれを理解する屁理屈がどこかに存在する筈だと探す。そして見つける。見つけた理論状況を再現して同じことが起こるなら、そこには神秘も高尚な領域も存在しない。科学とは、奇跡を人の解釈できる領域まで引きずり降ろすことを意味する。

「科学はなんでも解明したがる。そのエルフは、オーネストの見立てではその科学で魔法を解明したんだろうね」
「魔法を解明?魔法って使える奴にしか使えないから解明してもあんまり意味ないんじゃ……
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