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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
降り積もる灰燼から
44.トライアングルハーモニー
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は、この地を這う反逆の精霊に人間が恭順する瞬間を何よりも恐れているのさ……原因を作ったのは自分たちなのになぁ」

 その時の、心底愉快なものを見るようなオーネストの顔は今も忘れられない。くつくつと喉を鳴らすこの男の顔のあくどい事あくどい事。オリジナル笑顔リストに並べられるレベルかもしれない。
 というかオーネスト、お前は一体この世界のどれだけのことを知っているんだ……と言おうかと思ったが、知るのが怖くてその時は何も言えなかった。



 = =



「スロットリミッターが外れているか、多数の精霊の力を得たか……あのベルとかいうガキが見たという黒いエルフはそのどちらかだろうな」
「神の仕業って可能性もあるのか?恩恵のルール違反は天界の神が厳しく見張ってるから起きないんだろ?」
「だったらバレないようにやればいいだろ。馬鹿には出来ないが、出来る奴には出来る筈だ」
「おいおい神がその調子じゃ人間が困るんだが……」
「アズ様、アタシ達人間の事をクソ真面目に考えてる神なんぞ耳糞ほどしかいやしねぇんですよ?」
「あ、それもそうだったな……」

 目の前に神の所為で割を食いまくったであろう存在が約二名。偶に忘れがちになるが、神とは人間に対して優位であるが故に傲慢でもあるのだ。俺はそう感じたことはないが、「それはアンタがおかしいのだ」ということらしい。

 屋敷での朝、朝食を取りながらも俺達の会話は自然と先日の大騒動の真犯人のそれへと移っていた。現在この街で真犯人の情報を持っているのはこの屋敷の人間とヘスティア・ファミリア、そしてギルドのロイマンくらいである。なお、既にロイマンからはこの件について箝口令が敷かれているのだが、オーネストは知ったことかと言わんばかりにメリージアにバラしている。
 メリージアはこれを他のゴースト・ファミリアにバラすだろうが、ファミリアは「分かっている」奴ばかりなので余計な騒ぎは起こさない。ただ、自分にとって重要な一握りの存在にだけ情報をほのめかし、音もなく警戒するのだ。

「………そのエルフってのは、神の支配するこの世界を壊したいのかねぇ」
「俺の見立てでは、その気があるのは力を与えた側だけだな。当人は単純に与えられた力で世界を解明する気だろう。神や神秘にとって猛毒たりうる『科学』という視点で……な」
「???」

 メリージアは意味が分からないのか可愛らしく小首を傾げている。この可愛らしさで娼婦だったら間違いなく男心を弄ぶ稀代の悪女になっていただろう、となんとなく思う。彼女にはそういった逞しさが根底にあるからだ。
 特に理由もなくじっと見つめていると、メリージアがこっちの視線に気付いてちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。心臓どっくん。時折彼女が無性に愛おしくなるのは……俺も男だという事なん
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