第二話 鉱脈の先から届く声
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イドだったが、
「……声?」
ひょっとしたらそれは風の音だったのかもしれない。
しかし、一度望みが絶たれてこの場所に留まる理由を探していたライドにとって、その音はライドを引き止める声のように聞こえてしまった。
「この奥からか……」
一度は帰ると決めた筈だった。
しかし、まだ何かあるかもしれないという葛藤に勝てず、ライドは再び体を反転させると、鉱脈を超え洞窟の奥へと進んでいった。
奥から聞こえるか細い何かの音に誘われるように。
「……行き止まり……」
それは初めからわかっている事だったが、それでも声に出してしまったのは何も無かった失望からだったに違いない。
行き止まりについた後に照明を消して確認し、更に壁に手を触れて温度の確認もしてみたが、暗闇に光る星も見えなければ手に返ってくる温もりも確認する事は出来なかった。
「馬鹿だな。わかっていた事なのに」
それでも、僅かな望みに賭けたのは出発する前に見た少女の弱りきった姿だった。
この鉱脈を見つけて浮かれて、これまであの少女に甘えてきた自分。
およそ1年という月日の中で、彼女をお腹一杯食べさせた事が果たして何度あったであろうか。
折角見つけた鉱脈から取れるのはなんて事はない安い魔石ばかりで。
せめて価値を上げようと魔道具を作って売っても二束三文で買い叩かれる始末。
そんな中、先月採取した“聖水”の魔石はこの鉱脈を発見して初めて手に入れた魔力量の多い魔石だったのだ。
“聖水”の魔石自体はそれ程珍しい魔石ではない。
しかし、人の体温を上回るほどの魔力量はそれだけ多くの力を有していると言えるものだった。
だからこそ、ライドは自らの手でその力を引き出したかった。
その結果は……残念なものに終わってしまったが。
ライドは肩に掛けたザックの紐を強く握った後、身を屈めたまま方向転換しようとして……それに気がついた。
「……穴……?」
それは小さな穴だった。
ここまで進んできた洞窟よりも更に小さな穴が壁際の床にポッカリと空いていたのだ。
人一人やっと通り抜けるような大きさで、子供ならば場合によっては落ちてしまうだろうという大きさ。
前回この穴を発見できなかったのは、角度的に見えにくい位置にあったという事と、帰る時には照明をつけていたからだろう。
そう、今回は一つでも多くの魔石を手に入れたい気持ちが強く出ていた為照明を着けたり消したりしながら進んでいた。帰る時も同様だ。そして、今回照明を消した時に穴を発見できた意味は。
その穴がぼんやりと光を放っていたからだ。
「…………」
ライドは屈めていた身を更に屈めて、穴に向かって進んでいく。
覗き込
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