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まいどあり
第二話 鉱脈の先から届く声
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く押す。

「?」

 しかし、何度押し込んでも変化のない魔道具に首を傾げつつ引っくり返してライドはようやく思い出す。

 この魔道具を起動させる為に必要だった“光源”の魔石は、家賃の前払いとしてネリイに上げてしまったという事に。

 ライドは困ったように自らの右頬を描いた後、渋々魔道具をザックに戻すと狭い洞窟へと足を踏み入れた。
   
 “光源”の魔石は世界中のありとあらゆる場所に存在する希少価値の低い魔石であったが、同時に人類が最も多く使用する魔石の一つでもあった。
 その魔石はその名の通り光を発する魔石であり、魔道具を通すことで暗闇を照らす光となった。
 ある時は夜の町のいたる所で人々の足元を照らし、ある時は陽の落ちた家の中を暖かな光で照らした。

 先ほどライドが使用しようとしていた魔道具もその一種で、出先で突然の闇に覆われても簡単な操作で光を得る事が出来る非常に便利なものだった。
 しかし、魔道具である以上当然それを起動させる為に魔石は必要不可欠であり、なければ魔道具といえども唯の荷物に過ぎなかった。

 当然、光源の無い洞窟の中は昼間と言えども真っ暗で、ライドは何度も躓きそうになっては壁に手を当てて体勢を整える。
 それでもなんとか前進する事が出来たのは、暗闇に慣れてきて僅かに周りが見えるようになっていたのと、何度も通ったことによる慣れの部分が大きかっただろう。
 勿論、この洞窟自体が非常に狭いうえに一本道だったので、迷いようが無かったという事もある。

 そして何より──

「──見つけた」

 足を止めたライドの視線の先に見えるのは、暗闇に浮かぶ小さな星空。
 その光があまりにも小さかったものだから、どのみちある程度進んだ所で簡易照明の魔道具は消すつもりだったので、躊躇いなくここまで来たとも言える。

 ──この暗闇の中で輝く小さな星の一つ一つ。
 これこそが、この世界に再び奇跡をもたらした『魔石』だった──





「……よし」

 採取することが出来た魔石の中に“光源”の魔石があったのは幸いだった。
 暗闇の中、悪戦苦闘しながら取り出した簡易照明に魔石を嵌め込み起動させ、光が灯った事を確認してライドは思わずホッとしたように呟いた。

 暗闇の中で明かりも無しに動き回っていた事もそうだが、飯の種である魔石を持っていない状態に魔導技師である彼の中ではやはり言いようのない不安感に駆られていたのは間違いの無い事実だったから。
 
「それにしても、今回は4つか……思ったよりも多かったと見るべきか、現在の窮状を考えた場合少ないと見るべきか……判断に困る成果かな……」

 簡易照明の光の中に浮かび上がる3っつの小石に視線を落としながら呟くライド。
 見た目は小
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