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駄目親父としっかり娘の珍道中
第79話 似たような人が揃うと酷く面倒臭い
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「何!?」

 シュテルの叫びが聞こえる。それに反応し銀時の視線が桜月へ向けられる。
 奴は狂気に満ちた顔でこちらに迫って来ていたのだ。
 足を取られて落ちる事など最初から頭にないと言った面持でこちらに向かって突進してきたのだ。

「くそっ!」

 急ぎ立ち上がろうと足に力を籠める。だが、その瞬間銀時の周囲の船体から先の機械の管が飛び出してきた。
 
「げっ!」
「そいつの動きを封じろ!」

 桜月の命令を受け、無数の機械の管が銀時の体に絡みついてくる。凄まじい力で体中を締め上げて行き、言葉通りに銀時の動きの一切を封じてしまったのだ。

「ぐっ……野郎! 此処は健全な小説だってんだよ! そんなプレイはお呼びじゃねぇ!」
「お父様、今拘束を解きます!」
「そうはさせねぇ!」

 次に桜月が向かってきたのはシュテルの方だった。
 桜月の次の標的はシュテルであったのだ。
 銀時と戦いになれば必ずシュテルが邪魔をしてくる。彼女が居る限りこちらが攻勢に出られる可能性は低い。ならば、その壁をまず壊してしまえば良い事になる。
 幸い、二人の連携は今完全に分断されてしまった為に、互いをカバーし合う事は出来ない。

「くっ、まさかこんな方法で来るなんて!」
「圧倒的に戦闘経験が不足してるようだなぁお嬢ちゃん。俺達人斬りってなぁなぁ。勝つ為なら手段は択ばないんだぜ」

 不気味な笑みを浮かべつつ、桜月がシュテルに向かい斬撃を放つ。
 辛うじて目の前に展開した結界にてそれを防ぐも、その結界を桜月は容易く両断してしまった。

「なっ!」
「こいつが妖刀だってのを忘れたか? 何度も目の前に出されりゃ食い方も分かるんだよ!」

 食う。
 そう、食ったのだ。桜月はシュテルの張った結界を破ったのではなく文字通り食う、即ち吸収してしまったのだ。これでは結界は勿論バインドも通用しない事は明白となってしまった。

「逃げろシュテル! 今のお前じゃ勝ち目がねぇぞ!」
「ですが、それではお父様が!」
「馬鹿、俺の事なんか気にすんな! お前はお前の事だけを考えろ!」
「ですが……」

 銀時の言う事は最もだった。今の桜月には魔力関係の攻撃は一切通用しない。結界では斬撃を防げないし、バインドで拘束する事も出来ない。恐らく、魔力弾も奴には通用しないだろう。
 そもそも、魔力関係が著しく弱体化してしまうこの江戸の中で魔力で戦うこと事態がそもそも無理な話なのであった。

「まずはてめぇから食ってやらぁ!」
「!!!」

 打つ手をなくしたシュテルに向かい、上段からの桜月が迫る。防ぐ手立てはなかった。結界もバインドも無意味。避けようとしても今からでは遅い。頭から真っ二つに切り裂かれる未来が脳裏に過ってくる。
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