Side Story
少女怪盗と仮面の神父 12
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「……ハウィス、……なんとも、ない?」
「なんとも、って……私としては、ミートリッテのほうに聞きたいわよ? 珍しく遅くまで寝てると思って起こしにきてみたら、いきなりこれだもの。何かあったの? っていうか、作業服で寝てたの?」
ダメじゃない。ちゃんと着替えてから寝ないと、風邪を引くわよ?
と笑うハウィスも、やはりいつも通りだ。
「なにか……家の中から物が失くなってたり、壊れてたりしない!? どこかいつもと違う所はなかった!?」
「え? 何か、って? 別に、おかしなところはないと思うけど……って、ミートリッテ!?」
ハウィスの横をすり抜け、階段を駆け下りる。
何かある筈だと見て回った一階にも、異変などはまったくなかった。
(物も盗られてない。全部いつもと変わってない。私が眠らされただけ? なんで!?)
「本当にどうしたの? 嫌な夢でも見た?」
「ハウィス……」
とんとんとん、と軽い音で下りてきたハウィスは、ミートリッテの言動に違和感を覚えている。
いつもと違うのはミートリッテだと、傾いた群青色の目が語る。
「……ごめん……。なんでもない」
「……そう?」
「着替えてくるね。あ、朝食は? まだなら作るよ?」
「私が先に作っておいたわ。早く支度して下りてきてね。もう昨日はやけに忙しくって、すっごくお腹空いてるのよぉ〜」
「わぁあ! 待っててくれたの!? ごめん、あとちょっと待っててーっ」
再び二階へダダダーッと駆け上がり、部屋の中へ素早く逃げ込む。
乱暴に閉めた扉へ背中を押し付け……ズルズルと滑り落ちた。
(なによ、これ……。なんなのよ、これはぁ……っ!)
昨夜アーレストとハウィスを見送った後、家の中に人の気配はなかった。
にも拘わらず。
玄関扉と向き合っていたミートリッテは背後を取られ。
無様にも気を失った。
呼吸を塞いだ布に染み付いていた甘い匂いは、一夜が明けてもまだ少し、鼻の奥に残ってる。
この匂いを知覚した途端に襲ってきた、強烈な眠気。
薬草の類いか?
それも、かなり強い効果。
薬草学について詳しくは知らないが。
これほどの即効性だと、薬草よりも毒草に近い気がする。
そのクセ頭痛だの目眩だのの後遺症が無いのは、果たして故意か偶然か。
(家を荒らす為でもなく、ハウィスに手を出す為でもなく、私を眠らせる為だけに侵入してたっていうの? どうして? 何の目的で!?)
ミートリッテを抱えた腕力や体格からして、相手が男なのは間違いない。
シャムロックには独学とはいえ護身術めいた心得だってあるのに、初手であっさり
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