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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 12
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に向かって、歩き続けろ!
 「……よしっ。ちょっと現状把握に努めようかな。どっちもこっちも想像が多すぎるから惑わされるんだわ。確かな事実だけで判断しなきゃ!」
 まずは夕食を軽めに済ませてそれから……と、調理場へ転身しようとして
 「……っ!?」
 突然。
 背後から伸びた二本の腕に体を抱き込まれ、鼻と口を布で塞がれる。
 関節を押さえられた。両腕が動かせない。体を捩ろうとしても、ぴったり張り付かれて抵抗できない。
 (誰!? どうして家の中に!? 気配なんか無かった、のに……! しかも、この布……甘……い)
 視界がぐらりと大きく揺れた直後、二重三重にぶれ……息苦しさと凶悪な眠気に誘われたミートリッテの意識は、其処でプツンと途切れた。



 ……眩しい。 朝陽?
 ……鳥の声がする。 海鳥の声?
 ……頬に当たるそよ風が気持ち良い。
 暖かい、いつもの海から吹く風だ。
 「…………。なんで?」
 いつも通りの朝。いつも通りの目覚め。いつも通り開いた視界に、いつも通りに映る見慣れた天井。頭だけを動かして横を見れば、「くらげタン」こと愛しのくータンが、いつも通りの変わらぬ姿で鎮座している。
 何一つ変わらない。いつも通りの、ミートリッテに与えられた部屋。
 寧ろ、それが不気味だ。
 「……どういうこと?」
 まさか! と、勢いよく上半身を起こしてみる。
 嫌な予感は外れ、昨日着ていた作業服のままだ。脱がされたり乱されたりも無い。
 念の為に部屋全体を注意深く見渡してみたが、荒らされた形跡は何処にも無かった。
 強いて異変があるとすれば、閉めていた窓が開いている……だけ。
 「……………………ハウィス!」
 たっぷり十秒は頭を抱え、同居人の姿を思い浮かべた。
 まさか彼女に何かあったのではと、慌てて部屋を飛び出し
 「きゃ……っ! な、なに? どうしたの、ミートリッテ……?」
 開いた扉の手前でキョトンとするハウィスに出会した。
 その様子はただ驚いているだけで、いつもと変わりないように見える。
 「……ハウィス……なんとも、ない?」
 「なんともって……私としてはミートリッテのほうに聞きたいわよ。珍しく遅くまで寝てると思って、起こしに来たらこれですもの。何かあったの? って言うか、作業服で寝てたの?」
 駄目じゃない。ちゃんと着替えてから寝ないと風邪引くわよ? と笑うハウィスも、いつも通りだ。
 「何か……家の中で、何か失くなってたりしない!? いつもと違う所はなかった!?」
 「え? うーん……多分、無いと思うけど……って、ミートリッテ!?」
 ハウィスの横を擦り抜け、階段を駆け下りる。
 何かある筈だと見て回った一階にも……やはり、変化は無かった。
 (物も盗られてない。全部いつ
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