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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 12
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来は予想外だが、自警団の配備は想定していた。明るい内に準備を済ませていると思っていたからこそ、人が集まる教会への侵入は全く考えてなかったのだ。それよりハウィスのほうが気掛かりだった、というのもある。
 けれど、実際には農園の周りにも住宅区の周辺にも一人として居なかった。
 村の入口ではあれだけ急いていたのに。不思議な情報規制と合わせて、どうにも行動が鈍い。自警団側に問題でもあるのだろうか。
 「……まさかあいつら、何かしたんじゃないでしょうね……?」
 帰り道の途中で襲ってきた恐怖を思い出し、急に不安になった。
 バーデルの軍人とネアウィック村の自警団が組んだと知って、シャムロックが海賊対策に何か企んでいると疑い出した可能性は……無い、か。
 始終見張ってるなら、ミートリッテと軍人が接触してないのも知ってる筈だ。
 単純に目障りだから始末したとして……それなら今頃は村中で騒ぎになってそうなものだが、アーレストが去った後の外は静かなもので、今や、波と風の音がさわさわと聴こえるのみ。
 まだ、海賊も自警団も動いてない。と、思う。
 同時に、だったらあの視線はなんだ? とも思う。
 恐いと感じるほど何の感情も滲ませてなかった、蛇のように絡み付く視線。海賊共の、ある意味人間らしい下品な視線とは温度が違いすぎた。あれは海賊の目じゃない。じゃあ何なんだ。
 ……と。気付けば思考の迷宮でぐるぐるしていた。
 果てなき推測と想像の追い掛けっ子。
 これでは埒が明かない。
 「あぁ嫌だ……見張り野郎と話せれば良いんだけどなぁ。仕事はしてやるから、余計な手出しは一切すんなって。そしたら少しは楽になれるのに」
 立ち上がり、扉に額を預ける。
 「容量超えだよ……ちくしょう……っ」
 シャムロックは暗躍型の怪盗だ。人知れず風のように動いてこそ本領を発揮できる。知人や天敵ばかりに囲まれた場所で、八方塞がりのまま盗みを完遂させなきゃならないとか。それじゃあ手際が悪くなっててもおかしくはない。
 (誰に言い訳してるのかしら、私。海賊に? いつもと条件が違うんだから、失敗してもケチ付けんじゃないわよ! って? はは。莫っ迦莫迦しい)
 『依頼』に失敗してシャムロックの正体がバラされたら、ネアウィック村退去の道しか残らない。ミートリッテとしても後が無いこの現状で、よくもまぁ呑気に失敗した時の事など考えていられるものだ。
 それだけ追い詰められている自覚があるのだとしても、建設的な思考を手放してハウィスを護れるのか? もう無理ですと泣けば、誰かが助けてくれるとでも?
 甘ったれるのもいい加減にしろ。
 自分で考えた。自分で選んだ。その結果が今だ。
 だったら、投げ出すな!
 疲れても折れても、楽な流れには決して乗るな!
 歩け。自分が目指した先
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