Side Story
少女怪盗と仮面の神父 12
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「じゃあ、行って来るわね。しっかり戸締まりするのよ」
「うん、解ってる。ハウィスも十分気を付けてね」
「ええ」
アーレストが教会へ帰って直ぐ、ミートリッテの帰宅を待っていた所為で遅刻気味だったハウィスも、急ぎ酒場へ出勤した。
玄関にぽつんと取り残されたミートリッテは、とりあえず扉の内鍵を閉め……その場で頭を抱えてしゃがみ込む。
(……頷いちゃったよ……。これからどうすんの？ 私……)
狙っていた、神父公認での教会への出入りと内部探索の自由化。
ミートリッテを厄介事に巻き込む為の罠だと判っていても、教会内を好きに見て回れる権限はどうしても手に入れたかった。
そうして許可を獲得した今なら女神像に何回触れても不自然さは無いし、誰かに咎められる心配も無い。
ただ……聖職者の皮を被った悪人としか思えないあの男が、本当にそんな隙を与えてくれるのだろうか？
アーレストは、アリア信仰内部で迅速に、より多くの味方を必要としている。無関係です絶対お断りです！ と拒絶したミートリッテをしつこく求めるくらいだ。人材不足は火を見るよりも明らかで、そうなると入信者の育成にも障りが出ている筈。毎日毎月どの程度の入信者がいるのかは知らないが、新しい信徒の間にまで女神アリアへの依存が蔓延する前に精神的自立を促したいのがアーレスト一派だろう。
しかし。
ぶっちゃけ、入信の門を叩いてる時点で女神アリアへの依存は既に始まっている。
其処に先輩狂信者があることないこと(多分、無い事も有ったと本気で信じてるんだろうからタチが悪い)吹き込むわけで……どう考えても、少数派なアーレスト側は最初から不利だ。
まして精神的自立なんて、弱い人間が最も目を逸らしたくなる部類の戒め。参同者がほいほい現れるとは到底思えない。
要するに、見付かった希少な人材は、短期間で即戦力に仕立てる必要がある。信仰外の人間なら尚更だ。
きっと、朝から晩まで時間がある限りそれはもう怒濤の如くお勉強とお説教責めに遭う。好きにして良いですよーなどと言われながら、机と椅子と教材に挟まれ埋もれて動けなくなるんじゃないか？ と、ミートリッテは推測していた。
だからこそ、ありがた迷惑なアーレストの勧誘は回避したかったのに。
(許可だけ貰っても、実行できなきゃ意味が無いんだってば！ ああもう、いっそアーレスト神父が家に居る間に教会へ忍び込んでおけば良かった！ あの状況じゃ、ハウィスにだってどうにもできないのは確かだし……ううん。女の人達については、私が家に帰って来たから知った事。昨日の時点で予想できてなかった私が悪い。それに……)
ふと浮かんだ疑問に、顔を上げる。
(……自警団員の姿が何処にも見えなかった。まだ配備されてないの？ もう、夜なのに？)
女衆による家宅襲
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