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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十話 立場と名とその意味
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記されたマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四人の福音書を彼なりの術式に置き換えた物だ。言葉を口にする際に聖遺物に己の力を込めればいいだけなので、一見すればその能力の価値は高く見える。
しかし、それらの能力は前提として活動位階である上に、決して良いとはいえないコストパフォーマンス、汎用性の高さに反比例した火力の低さなどと、聖遺物自体の性能は余り高くない。先程口にした栄唱とて本来なら完全に動きを止める物であるが蓮は一瞬止まったともいえない程度に膠着しただけなのだ。

「主よ、どこへ行き給うのか? (quo vadis domine? )」

だからといって彼はその能力を過小評価した覚えは無い。要は使いようなのだ。
蓮の後ろに突然現れるアウグストゥス。発動したのは短距離転移系の能力。消費量が他の栄唱に比べ大きいが先手を確実に取れるものだ。
六十年、いやアルフレートに絶対の忠を誓って以来、彼は自分の能力に驕りなど見せず常に極め続けた。まさに彼は老成した達人なのだ。経験や魂の総量がものをいうこの戦いで魂の総量こそ劣っていようともその実力はアルフレートの臣足るに相応しいものだった。

「ッアアアァァ―――!!」

反射で回避しきる蓮。しかし、彼に余裕は無く僅かながら押され始める。元々、拮抗していた戦いだ。何らかの切っ掛けがあれば当然のように崩れる。アウグストゥスは勝負を仕掛けた。それに抗ずるには蓮自身も己の武器を見せねばならない。
距離をとり、目を閉じる。普通ならば好機だと判断するだろう。だが、それはあくまで流れるときが同じ時だけだ。

「日は古より変わらず星と競い (Die Sonne toent nach alter Weise In Brudersphaeren Wettegesang. )
定められた道を雷鳴の如く疾走する (Und ihre vorgeschriebne Reise Vollendet sie mit Donnergang. )」

今こそ疾走すべき時だ。形勢が傾く前に、このときが止まってしまえばいい。この刹那を味わえばいい。故にこの詠唱。時間を引き伸ばせばいい。

「そして速く 何より速く (Und schnell und begreiflich schnell )
永劫の円環を駆け抜けよう (In ewig schnellm Sphaerenlauf. )
光となって破壊しろ (Da flammt ein blitzendes Verheeren )
その一撃で燃やしつくせ (Dem Pfade vor des Donnerschlags; )」

アウグストゥスはその詠唱に焦りを覚える。己では勝つことが出来ない。それを悟ったが故に焦りを掻き立て近づこうとする。が、間に合わない。近づこうとすればす
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