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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十話 立場と名とその意味
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に斃されるだろう。唯でさえ少ない戦力の中で今以上に戦力を減らすことは出来ない。さらにはエレオノーレが居る時点で彼自身が逃げれる保障もないのだ。
ヴァレリアは己の現状を知り、無意識の内に敗北を悟らざるえなかった。



******



―――同時刻・教会―――

「退けェッ―――!!」

「グッ―――その程度でッ!」

藤井蓮と分体の一人であるアウグストゥスは教会の講堂で互いに戦っていた。正確には蓮は余力を残して先に進める程度に、アウグストゥスは一秒でも長く持たせる戦い方をしていた。
互いに見ている立場も目的も違うのだ。蓮はこの後もこの先に居るであろう三騎士の誰かと戦わねばならない。アウグストゥスは三騎士、或いは自らの主であるアルフレートが戻るまで彼を通さないことが目的なのだ。突き詰めれば互いの見ている価値観は一致しない。
蓮は消耗を最小限では無く最大限にした上で進めば三騎士やアルフレートが戻る前に玲愛を救えるだろう。アウグストゥスでは蓮が全力で向かってくれば消耗させることは出来ても時間を稼ぐことは出来ない。だが三騎士が居ないことを知らない蓮は余力を残さざるえない。
逆にアウグストゥスが全力で向かえば稼げる時間こそ減るだろうが現状の自分の実力を上回るパシアスが控えているのだ。消耗させるだけで後はパシアスに任せればゾーネンキントを守護する役目は果たせるだろう。しかし、アウグストゥスは分体全員がアルフレートに忠を誓っているわけではなく裏切っている相手もいることを理解しているためパシアスを信頼しきれない。
結果として、両者共に戦術の方に目が行き過ぎて戦略を見誤ったというべきだろう。上辺だけ取り繕った全力。無論、本人達からすれば本気なのだろうが、周りから見れば茶番にしか見えないのだ。勿論、どちらも全力を尽せば必ずそうなるというわけでもないので一概に間違っていると断ずることは出来ない。どちらにせよifの話に過ぎないというだけのことだ。

「通すわけには……いかないッ!!」

アウグストゥスはアルフレートが使っていた『栄唱は十字架の印』と同じように闇を扱い蓮を止める。それを避けた蓮はギロチンでアウグストゥスの首元を狙い切り裂こうとする。しかし、集まった闇の粒子がそれを阻む。瞬間、蓮の足元から影が飛び出す。

「くそッ!?」

飛び跳ねることでそれを回避し、そのまま天井を蹴り、落下の勢いをつけて一気にアウグストゥスに迫る。ギロチンはこれまで以上の速度補正を得て彼に切りかかった。

「私に触れるな(noli me tangere. )」

その言葉を発するだけで蓮は瞬間的に膠着した。―――『四の福音書(quattuor Evangelium)』―――アウグストゥスが用いる聖遺物の一つである。ラテン語によって書き
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