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八神家の養父切嗣
四十四話:選択肢
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る時に彼は気づいた。それもまた過ちであったと。人を殺して得る平和など真の平和でないと気づいた。しかし、今までに築き上げた屍の山が道を正すことを許さなかった。さあ、彼はどうしたと思うかね?」

 歪んだ笑みで質問を投げかけるスカリエッティにスバルは何も返せなかった。まるで質問が刃となって己の喉に突き立っているかのように声を出そうにも何一つとして出すことが出来ない。心が砕けてしまいそうになる。自分の息の根を今すぐに止めたくなってしまう。

「彼は今までの犠牲に報いる為に変わらず殺し続けた。その先に全てが救われる結末が訪れると信じてね」
「そんな方法じゃいくらやっても何も変わらない! どうして同じ過ちを繰り返すの!?」
「いや、方法はある。私が見つけ出した。この世界を望むものに塗り替えてしまえばいいのだよ」
「世界を……塗り替える?」

 荒唐無稽な話に思わず間の抜けた顔をしてしまうスバル。しかしながらスカリエッティは自信満々な表情で、アインスはそれが当たり前といった顔をする。それを見てスバルも顔色を変える。この話は冗談ではないのだと。

「そう、私はその方法を見つけ出し正義の味方に教えた。犠牲に見合った対価を得ることが出来るとね」
「そんなことが本当に…?」
「ああ、平和な世界など思うがままだ。満足のいく(・・・・・)対価さえ払えば如何なることも叶えてあげよう」

 一体どのようにしてそれを叶えるつもりかは分からないが、スカリエッティの語り方を見るに既に完成はしているのだろう。しかし、何故だかスバルにはその方法が碌な方法だとは思えなかった。

「償いって……世界を平和にすること?」
「私にも彼の心の中までは分からないが契約内容としてはそうなっている。それと力を上手く使えば―――既に死んだ人間を蘇らせることもできる」
「……え」
「スバル・ナカジマ。君には―――生き返らせたい人はいないかい?」

 ゾッとするような笑みと共に言われた言葉にスバルの心臓は鷲掴みにされる。死者が蘇る。それは人類が生まれてから求め続け、忌避し続けてきた禁忌だ。誰しもが失った者を取り戻したいと願い、反対に殺した者が蘇ることを恐れる。
 
「君の母親を蘇らせることができる。それにあの火災をなかったことにもできる」

 悪魔のささやきがスバルの耳を打つ。優しかった母。もう一度の温かな胸の中で眠りにつきたいと思ったことは一度や二度ではない。それにあの火災で死ぬべきだったのは自分だったのではないかと思い悩むことも何度もあった。それらが全て解消させるのだとしたら、それはとても素敵なことではないのか。

「さあ、私達と手を組もうじゃあないか。私達は遺伝子の繋がった確かな家族だ。何も恐れることはない。君の仲間も平和な世界を見れば分かってくれる。戸
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