四十四話:選択肢
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からないがスカリエッティが視線をこちらに向ける。
「さて、既に分かっていると思うが自己紹介をしよう。私の名はジェイル・スカリエッティ。しがない天才科学者さ」
自意識過剰とも呼べる名乗りにスバルは思わず呆れそうになるが、スカリエッティは至って真面目だ。そもそも彼の業績は犯罪者でなければ間違いなく歴史に名を残すと言われているほどのものなのだ。ある意味では正当な評価と言えよう。
「戦闘機人の生み出した広域次元犯罪者……」
「そう、残念ながら君の生みの親ではないが君の遺伝子には私の技術が生きている。簡単に言うと祖父のようなものだね」
「……嫌です」
「くふふふ、これは嫌われたものだね」
心底嫌そうな顔で拒否するスバルにも全く動じずにスカリエッティは不気味に笑い続ける。年頃の娘を持つ父親にもこのメンタルがあれば余り傷つかないであろうが娘の負担は普通の家庭の子の倍にはなるだろう。
「それで……あなた達は何がしたいんですか? 拘束もしないで逃げられていたらどうするつもりだったんですか」
「それなら縁がなかったと諦めるだけだよ。私は君と話したかったのでね」
「私と? 戦闘機人だから?」
「いいや。確かに私の技術の産物ではあるがそんなものはデータから見ればいいだけの話だ。私が真に興味があるのは君の人間としての精神性―――正義のあり方だ」
その言葉を聞いた瞬間に全身に鳥肌が立つ。狂おしいほどの欲望が全身に叩き付けられる。知りたい。全てを知りたい。己の知らぬものを全て知りたい。乾いた砂のように貪欲に知識を吸い取っていく。ただ目を合わせただけだというのにそれだけの悪寒をスバルは味あわされた。
「私は大きな夢や理想、つまりは欲望が大好きでね。不可能に近しい欲望を追っている者を見るとついつい応援したくなってくるのだよ。例えば……世界を救いたいという欲望などをね」
黄金の瞳が獲物を見つけた蛇のように細められる。知りたいという欲求はスカリエッティの体の芯に刻み込まれた偽りの願いかもしれない。しかし、それが自分の願いであることに変わりはないと彼は貪欲に求めていく。だからこそ、非凡な願いを持つ者を慈しみその手で愛す。
「……それと切嗣さんの贖罪が何か関係しているんですか?」
「ああ、勿論! 大いに関係しているとも!」
スバルの問いに嬉々とした表情で語り始めるスカリエッティ。それはまるで舞台の上で主役を張る役者のように。好きで好きでたまらないアーティストを語るファンのように。熱っぽく、うなされたように、どこか馬鹿にしながら語っていく。
「世界を救おうとした青年はある日気づいた。争いを終わらせるには必要悪がいると。そして青年は必要悪となり人類を救うために人を殺し続けた」
「…………」
「だが、あ
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