四十四話:選択肢
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義に肩入れするのだけは止めておけ」
でないと―――地獄を見るぞ。
アインスの瞳は雄弁にそう物語っていた。嘘ではないだろう。実際に彼の夫は紛れもない地獄を歩いている。きっと自分と同じように、いや、自分以上に己の生き方に自信が持てずに常に死にたいと思っている。
幸せを感じれば感じるほどに苦痛を感じ、舌を噛み切りたくなる。そんな地獄以外の何ものでもない道を彼は歩き続けている。理解できなかった。苦しいのならやめればいい、逃げればいい。だというのに何故歩き続けるのか。もう、かつて夢見た地すら幻想だと分かっているはずなのに、何故。
「……私が憧れた正義の味方は今、何を求めて人を殺しているんですか? もうそんな方法じゃ誰も救えないって分かっているのに! 自分も相手も傷つくだけだって理解しているのに! どうしてこんな無意味なことを繰り返すんですか!?」
怒りと悲しみが混ざった声でスバルは叫ぶ。止めて欲しい。切嗣にも、これから殺されるかもしれない人にも苦しんで欲しくない。ああ、どうして彼が自分に正義の味方をやめさせようとしているのかが今ならわかる。こんな残酷な行いを見ていられるわけがない。どれだけ先に進もうとも待っているものは破滅だけなのだから。
「そうだな。何か当てはまるとすれば、あれは……贖罪かもしれないな」
「贖罪…? 同じ間違いを繰り返すことがどうして贖罪につながるんですか?」
「それは―――」
「私から説明しようじゃないか、それは。くふふふ!」
憂いに満ちた声で贖罪と語るアインスに対してなおも問いかけるスバル。その答えが語られようとした時、ドアが開きこの場所の主が顔を出す。その顔を見た瞬間にスバルは体の芯から冷たくなるような感覚を覚える。
全てが楽しく、全てを諦めたかのような異形の笑み。舐めるように、ゴミでも見るように自身を見つめる黄金の瞳。整っていながらどこか壊れそうな顔立ち。この顔を見たことが無いというのに自分は彼を知っている。魂に、この機械の体に刻み込まれた技術がそう語り掛ける。
彼の名前は―――
「ごきげんよう。私の技術によって生まれ、私の技術を超えた傑作、未来の正義の味方」
「スカリエッティか……ノックぐらいはしたらどうだ?」
「おっと、失礼。私は面白いものが見つかるとどうにも冷静さを欠いてしまうようでね、くくく」
―――ジェイル・スカリエッティ。
この身を機械でも人でもないものに変えた技術を作り出した存在。いわば生みの親のようなものだ。しかし、そんな理由だけで親近感が湧くわけもない。自分という存在を生み出すためにどれだけの失敗があったかなど分からないし、その過程で出た犠牲など知りたくもない。抱く感情は全ての元凶に対する怒りのみ。その怒りを感じ取ったのかどうかは分
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